中小建設業が、是正勧告書を受けると工事が止まるか?
未払残業代(労働基準法違反)の是正勧告を受けたことのみを理由として、「工事が止まる」という直接的な命令が下される可能性は非常に低いです。
しかし、労働基準監督署の立ち入り調査は、通常、労働基準法(賃金、労働時間など)と労働安全衛生法(作業場の安全、健康管理など)の両面で行われます。このうち、労働安全衛生法違反があった場合には、工事が停止する可能性があります。
1. 労働基準法違反(未払残業代など)の場合
未払残業代は労働基準法違反であり、これに対するペナルティは、基本的に未払賃金の支払いや罰金(刑事罰)であり、「作業停止」の行政処分には直接つながりません。
2. 労働安全衛生法違反(工事停止の原因)の場合 ⚠️
建設業の立ち入り調査において、労働者に急迫した危険があると認められた場合、労働基準監督署長は**「使用停止等命令書」という行政処分を交付することができ、これによって工事の一部または全部が停止**することがあります。
これは、是正勧告(行政指導)とは異なり、法的拘束力を持つ行政処分です。
「工事が止まる」具体的なケース
- 作業の全部または一部の停止:
- 足場に手すりが設けられていない、床材に大きな隙間があるなど、墜落・転落の危険が極めて高い場合。
- 建設機械の整備不良や、安全装置が機能していない場合。
- 地山の崩壊や土石流の危険がある場所で、必要な安全対策が講じられていない場合。
- 建設物等の全部または一部の使用の停止:
- 危険な状態にある建物や設備の使用を禁止される場合。
これらの命令が出された場合、企業は指摘された危険な箇所を改善し、労働基準監督署に報告して命令が解除されるまで、該当する作業や場所での工事を再開できません。
まとめ
未払残業代の是正勧告を受けた建設業者が、同時に安全面で重大な欠陥を指摘され、使用停止等命令を受けた場合に、結果として工事が停止することになります。建設業においては、賃金・労働時間の問題だけでなく、安全衛生管理の徹底が工事継続の鍵となります。

