読書感想

「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」
ダニエル・ソカッチ著
鬼澤忍訳
(NHK出版・2023年)

 今なお紛争が絶えないイスラエルの
歴史について、ユダヤ系アメリカ人で
ある著者が、中立的な立場から語るこ
とで、誰もが事実に基づき、冷静に
将来を考えられるようにするために
書かれたものです。

 現在の右派が力をずっと持ち続けて
きたイメージを、イスラエルという
国家にもっていましたが、そんなこと
はなく、建国当初は、イスラエルに
住むすべての人々に、宗教にかかわらず
権利と平等を保障するという独立宣言
があったように、建国当初から1970年
代までは、左派政党が主導するなど
ユダヤ人、パレスチナ人ともに生きら
れる環境を目指す苦闘が続いていました。

 しかし、1970年代以降、1967年の
6日戦争でユダヤ人が望外な占領地ヨル
ダン川西岸地域を得たことをきっかけに、
イスラエルでは、徐々に、ユダヤ人のため
だけにあるというビジョンが強化され、
現在のようなパレスチナ人には厳しいイス
ラエルが形成されてきたという事実を知る
ことができます。

 歴史にもしもはありませんが、
ラビン首相が暗殺されなければ、
左派・右派ともに人脈をもっていた
人物だけに、パレスチナ国家が
樹立されて、二国で平和的共存が
できていたのではないかと思わされ
ます。

 ひとつ救いがあるのは、今の
イスラエルの政治的姿勢は、必然
なのではなく、偶然の出来事、
ユダヤ人過激派の積年の努力
の結果であるということです。
 国際社会が、イスラエルに対して、
社会正義、人権尊重を強く求め続
ることで、状況は好転する可能性
があることを心に留めておきたい
と思います。