なぜ、建設業は農業分野への参入が容易なのか？

建設業が農業分野への参入が比較的容易であるとされる主な理由は、経営資源の親和性と事業の繁忙期の相補性にあります。

1. 経営資源（ヒト・モノ・カネ・ノウハウ）の活用

建設業が農業に参入する際、既存の経営資源を効果的に転用できる点が大きな強みとなります。

資源	建設業での活用	農業への転用・相乗効果
モノ（機械・施設）	ブルドーザー、トラクター、トラックなどの重機・車両。	農地の改良整備（開田・開畑）、耕作放棄地の再生、土木技術を活かした農業土木に利用できる。
ヒト（人材・雇用）	重機操作やメンテナンスに慣れた技術者。	農業機械の操作や施設の建設・管理・修理に活かせる。
ノウハウ（管理技術）	工程管理、品質管理、安全管理、原価管理のノウハウ。	農業でも重要な生産計画の策定や、JGAP/GLOBALG.A.P.認証取得に必要な文書化・リスク管理の仕組み作りに応用できる。
カネ（資金力）	農業は初期投資が大きいが、本業の経営体力を活かして長期資金を確保しやすい。	大規模な施設園芸（ビニールハウスや温室）の建設投資や、スマート農業設備の導入に有利。

2. 雇用と閑散期の平準化

建設業の公共工事は冬場（12月～3月）に繁忙期を迎える一方、露地栽培を中心とした農業の繁忙期は春から秋にかけてです。

• 通年雇用の確保: 閑散期（特に雪などで工事が制約される期間）に社員を農業作業に回すことで、通年雇用を維持し、人材の有効活用と年間を通じた雇用の平準化を図ることができます。これは、公共事業の減少や景気変動による受注減への対策としても有効です。

3. 地域社会との関係性

建設業は、地域に根差したコミュニティ産業であり、その特性を活かせます。

• 農地の確保: 地域との関係性を活かし、過疎化・高齢化で問題となっている耕作放棄地のリースや活用が進めやすい。
• 地域貢献: 地域の農業の新たな担い手となることで、地域経済への貢献や企業PR・ブランディングにつなげることができます。

これらの要因が組み合わさることで、建設業は比較的スムーズに農業分野へと事業を多角化できるのです。