【2024年問題対策】中小建設業が「変形労働時間制」と「フレックスタイム制」を導入する現実解
2024年4月以降、建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革が待ったなしの状況です。労働時間を柔軟に管理できる「変形労働時間制」と「フレックスタイム制」は、その解決策として注目されていますが、特に現場作業員への導入については、制度の特性を理解しておく必要があります。
今回は、中小建設業がこれらの制度を導入する際の可能性と、現場労働者への適用における注意点を解説します。
1. 結論:建設業の特性に合うのは「変形労働時間制」
中小建設業で働く方々、特に現場の作業員に対して、それぞれの制度の導入可能性は以下の通りです。
| 制度 | 導入の可能性 | 現場作業員への適用 |
| 変形労働時間制 | ◎ 導入可能 | 特に「1年単位」は親和性が高い。繁閑に合わせて労働時間を調整する。 |
| フレックスタイム制 | △ 導入は可能だが、現場作業員には不向き | 実務上、困難。内勤部門や管理職には導入しやすい。 |
2. 変形労働時間制が現場にフィットする理由
建設業の業務は、工期や天候に左右され、業務の繁閑の差が大きいのが特徴です。変形労働時間制は、この特性に対応するために非常に有効です。
【活用シーン】
- 1年単位の変形労働時間制:1年間のうち、繁忙期(工期直前など)は所定労働時間を長く設定し、閑散期(冬季、梅雨時期など)は短く設定することで、年間を通して週平均40時間以内に収めることが可能になります。
- メリット:事前に設定した時間内であれば、長時間労働でも割増賃金(残業代)が発生しないため、人件費の平準化や残業代抑制に繋がります。
【導入時の注意点】
- 事前特定:どの日に何時間働くか、労働日・労働時間を事前に具体的に決定し、従業員に通知する必要があります。天候などによる急な変更は、原則として認められていません。
3. フレックスタイム制が現場作業員に不向きな理由
フレックスタイム制は、労働者が始業・終業時刻を自分で決定できる制度であり、個人の裁量が前提となります。しかし、建設現場ではこの自由度が大きな問題となります。
【導入が難しい実務上の課題】
- チーム作業の原則:現場作業は、朝礼から始まり、複数の職種や作業員が連携して行われます。個人がバラバラの時間に出勤・退勤すると、共同作業や工程の進行が不可能になります。
- 安全管理と指揮系統:現場の安全確保や監督者による指揮命令は、全員が一堂に会していることが前提です。自由な出退勤は、現場の安全管理体制を崩壊させるリスクがあります。
- 元請けとの連携:下請けの中小建設業の場合、作業時間は元請けの定めた工程に合わせて決まることが多く、作業員個人に時間を決める裁量権がありません。
【導入を検討できる対象】
フレックスタイム制を導入するなら、現場作業員ではなく、主に**内勤の技術者(設計、積算)や現場管理・監督者(施工管理)**に限定することが現実的です。彼らは現場以外の場所での業務や、業務の進め方に裁量があるため、この制度の恩恵を受けやすくなります。
4. まとめ:制度導入は計画的に
2024年問題に対応するためには、単に制度を導入するだけでなく、業務の実態に合った制度を選択し、適正に運用することが不可欠です。
中小建設業が柔軟な働き方を実現し、若手人材を確保するためには、「1年単位の変形労働時間制」を柱としつつ、内勤部門への「フレックスタイム制」の適用など、部門ごとに最適な労働時間制度を組み合わせるのが、最も現実的かつ効果的なアプローチと言えるでしょう。
