中小建設業に労働基準監督署の立ち入り調査があり、3年間の未払残業代支払を命じる是正勧告書が交付され、実際に支払った場合の影響について。

未払残業代の支払いに加えて、中小建設業が労働基準監督署の是正勧告を受けた場合に予想されるペナルティや影響は、主に以下の3点です。

1. 刑事罰の可能性 🚨

未払残業代は、労働基準法違反(割増賃金の不払いなど)にあたります。

是正勧告に従い支払いを完了しても、法律上は以下の刑事罰が科される可能性があります。

  • 罰則: 6か月以下の懲役 または 30万円以下の罰金(労働基準法第119条第1号)

通常は、是正勧告に迅速かつ誠実に対応し、未払賃金を支払えば、直ちに刑事罰が科される可能性は低いとされています。しかし、悪質な違反と判断された場合や、是正勧告を無視し続けた場合には、労働基準監督署から送検され、検察庁が起訴して刑事罰を追求する可能性があります。

2. 民事上のペナルティ(遅延損害金・付加金) 💰

労働者から民事訴訟労働審判を起こされた場合、未払残業代のほかに以下の金銭的なペナルティが発生する可能性があります。

  • 遅延損害金:
    • 在職中の期間について:年3%(商事法定利率)の遅延損害金が発生します。
    • 退職後の期間について:年14.6%(賃金の支払の確保等に関する法律に基づく遅延利息)という非常に高い利率の遅延損害金が発生します。
  • 付加金:
    • 裁判所が悪質と判断した場合、未払残業代と同額(最大)の付加金の支払いを命じられることがあります。例えば、未払残業代が300万円であれば、さらに最大300万円の付加金が上乗せされ、合計600万円の支払いが必要になる可能性があります。付加金は裁判になった場合にのみ発生するペナルティです。

3. 社会的・経営上の影響 📉

是正勧告を受けたという事実は、間接的ではありますが、企業経営に影響を及ぼす可能性があります。

  • 企業名の公表:
    • 労働基準監督署の指導にもかかわらず、重大または悪質な法令違反が是正されない場合、企業名が公表される可能性があります。建設業においては、公的な入札や取引において不利になることがあります。
  • 信用・イメージの低下:
    • 未払残業代の是正勧告を受けたことが社内外に知られると、企業の社会的信用やイメージが低下し、取引先との関係や採用活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 他の法令違反の指摘:
    • 立ち入り調査は未払残業代だけでなく、労働時間管理、安全衛生、その他の労働条件など広範な項目にわたって行われます。未払残業代以外にも、労働安全衛生法違反などの是正勧告や指導が追加で出される可能性があり、それらの是正対応に伴うコストや手間が発生します。

是正勧告は行政指導であり、それに従い未払賃金を支払ったとしても、上記のような刑事上・民事上のリスク経営上の影響が残ることに注意が必要です。

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