IT企業のSNS採用動画に欠けがちな「キャリアコンサルタントの視点」とは?

近年、IT企業を中心にSNSを活用した採用動画が増えています。映像技術の進化に伴い、動画のクオリティは格段に向上し、目を引く美しい作品が多くなっています。

しかし、その裏で「動画は綺麗だけれども、本当に知りたい情報がない」「自己PRに偏りすぎている」と感じる求職者も少なくありません。

本記事では、IT企業の採用動画が陥りがちな課題と、真に求職者の心を掴むために必要な「キャリアコンサルタントの視点」について解説します。


1. 採用動画は「マーケティングの延長線上」にある

まず、IT企業の採用動画が基本的に**「採用マーケティング」**の一環として制作されていることを理解する必要があります。

企業は、以下の応募者目線を徹底的に突き詰めて動画を制作しています。

  • 応募者目線: 「自分がここで働いたらどうなるか?」「職場の雰囲気は馴染めそうか?」
  • 経営者・社員: 「経営者はどんな人物か?」「どんな人と一緒に働くのか?」
  • リアルな情報: 「キャリアパスは?」「どのような技術や機械を使うのか?」

このアプローチ自体は正しく、ターゲットの「感情に訴えかけるストーリー」や「リアルな現場の声」を重視することで、テキストだけでは伝わらない企業の温度感や空気を伝えることに成功しています。

2. 映像美の追求が招く「情報不足」という課題

しかし、美しさや面白さを追求するあまり、キャリア形成に必要な核心的な情報が抜け落ちてしまうケースも散見されます。ここに、しばしば「キャリアコンサルタントの視点が欠けている」と感じる原因があります。

具体的に、採用動画が陥りがちな「情報の表面化」は以下の点に現れます。

観点採用動画にありがちな表現(課題)キャリア視点での本来のニーズ
成長・キャリア抽象的な「成長できる環境」という言葉で終わる。具体的なキャリアステップ(入社3年後、5年後の職種・役割、必要なスキル)や評価制度が明確に示されているか。
仕事のリアル成功談や華やかなプロジェクトだけが強調される。仕事の厳しさ、困難な部分、そしてそれをどう乗り越えるかという、ミスマッチを防ぐための正直な情報。
企業文化「風通しが良い」「アットホーム」などの定型表現が多い。組織の心理的安全性多様性への対応チームの具体的な協働の仕方など、「自分は組織の中で居場所を見つけられるか」を判断できる情報。

求職者が本当に求めているのは、入社後の自分の姿と、その未来に至る道のりの解像度です。映像がどんなに綺麗でも、この解像度が低いと、求職者は不安を感じてしまいます。

3. 真に心を動かす「キャリア視点」とは

成功する採用動画は、この「キャリア視点」を企画段階から深く取り入れています。

キャリアコンサルタントの視点とは、単に企業を美しく見せることではなく、応募者が「納得感をもって自身のキャリアを選択できる」ための判断材料を提供することにあります。

  1. 自己理解と仕事理解の促進:
    • あなたの価値観と当社の仕事の意義がどう結びつくか? を問いかける構成にする。
    • 仕事のリアルな厳しさを正直に伝え、それでも「この会社で挑戦したい」と思わせる論理的な理由を用意する。
  2. ミスマッチの防止:
    • 求める人材像を曖昧にせず、企業文化との相性を判断しやすい具体的なエピソードを盛り込む。
    • 「こういう人は合わないかもしれない」という情報も提供し、相互に納得感のあるキャリア選択を促す。

まとめ:綺麗さの先に「深さ」を求める時代へ

IT企業の採用動画は、情報発信ツールとして非常に強力です。しかし、今後さらに応募者の信頼とエンゲージメントを高めるためには、**「映像美」「キャリア形成に資する情報の深さ」**のバランスが不可欠です。

単なるプロモーション動画ではなく、求職者の**「未来のキャリアを真剣に考えるためのドキュメンタリー」**として動画を捉え直すことが、採用成功の鍵となるでしょう。

\ 最新情報をチェック /