読書感想

「大国政治の悲劇 新装改定版」
ジョン・J・ミアシャイマー著
奥山真司訳
(五月書房新社・2019)

 大国は、自国の安全保障を確保
するため、覇権国家になることを
目指すものであり、その根底に
あるのは、他国への恐怖にある
という論旨には、当初は驚かさ
れました。
 他国への恐怖は、大国の政策
担当者が、他国の経済力、軍事
力と異なり、他国の政策担当者
の思考が読めないことに起因し
ているとの主張です。

 しかし、国際社会には、警察
のような組織がない以上、自国
安全は、自分で確保するしかない
という現実を踏まえると、納得
させられました。

 本書では、過去の歴史を参照
することで、様々な大国がとった
実際の行動に言及して、著書の
オフェンシブ・リアリズム(攻撃
的現実主義)の論証がなされて
いきます。そうすると、過去の
大国がとった戦争にも、意味は
あったのだと感じさせられました。

 著者も述べているように、戦争
を求めるのではないが、大国が
国際社会という無法地帯において、
自国の生存を確保するためには、
覇権国家を目指すしかないという
論理には、これまで、幾多の戦争
が繰り返されてきた現実を踏まえ
ると、悲しいことですが、これか
らも、戦争が起きる可能性は否定
できないということです。

 皮肉なのは、第二次世界大戦後
米ソ二極化、核武装が進むことで、
東西両陣営が、ヨーロッパという
地域でにらみ合いとなり、約50
年という平和の時代が続いたこと
は、世界史全体を見渡してみても
珍しいことであっということです。
一方、成長目覚ましい中国が、自
国の安全を確保するためには、ア
メリカ合衆国が行ったように、
西半球の覇権国家を目指すこと
は、一つの流れとして、否定でき
ないです。さらに厄介なことに、
アジア地域の状況は、米ソ二極化
時代と比較して複雑となっており、
戦争が起きやすい状況であるという
著者の指摘には、一考の価値がある
と考えます。

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