警備会社の「管制」という職制とは何か?

警備会社における管制(かんせい)という職制は、警備業務の現場が円滑かつ確実に機能するための司令塔の役割を担います。警備員を手配し、勤務を調整し、緊急時に指示を出すなど、警備会社全体の運用を支える非常に重要かつ責任の重いポジションです。

以下に、管制職制の詳細を解説します。


警備会社の「管制」とは?

「管制」とは、警備現場に配置する警備員(隊員)の手配、配置、指示、および緊急時の対応を統括管理する業務のことです。

警備員が実際に施設や交通現場で警備活動を行うのに対し、管制担当者は主に管制室オフィス内で、情報システムや通信機器を駆使して業務を遂行します。現場に出ることは少ないものの、全警備業務の成否を握る中枢的な役割を果たします。


管制業務の主な仕事内容

管制担当者の業務は多岐にわたりますが、大きく分けて「人員配置・調整」「リアルタイム管理と情報伝達」「緊急時対応」の3つに集約されます。

1. 人員配置・調整(シフト・配備計画)

最も中核となる業務であり、顧客との契約内容に基づき、適切な警備員を適切な場所に配置します。

  • 警備員の手配と配置の決定:
    • 翌日以降の各警備現場(施設警備、交通誘導、イベント警備など)で必要な人数時間帯を確定します。
    • 現場の特性(商業施設、工事現場、イベント会場など)と、警備員個々のスキル資格(交通誘導警備業務検定など)、経験を照らし合わせ、最適な人材を配置します。例えば、交渉や住民対応が必要な現場にはコミュニケーション能力の高い人材を、夜勤には生活リズムが安定した人材を選定します。
  • 勤務シフトの作成と調整:
    • 警備員のシフト希望労働時間を考慮し、公平かつ効率的な勤務表を作成します。
    • 急な欠勤遅刻が発生した場合、迅速に代替要員を探し、再配置の調整を行います。
  • 警備員への情報伝達:
    • 配置が決定した警備員に対し、配属先の現場情報集合時間・場所具体的な業務内容を正確に伝達します。

2. リアルタイム管理と情報伝達

警備業務が始まってからも、管制室から現場の状況を常に把握し、適切な指示を出します。

  • 勤怠管理(上下番報告の確認):
    • 警備員が現場に到着・勤務開始(上番)、勤務終了(下番)したことをリアルタイムで把握します。
    • 遅延や連絡の不備がないかをチェックし、問題があれば警備員に連絡を取り対応を指示します。近年は専用の**管制システム(アプリなど)**を利用して効率化が進んでいます。
  • 現場状況の監視と把握:
    • 警備システム(監視カメラ、警報装置など)の運用状況を監視します。
    • 現場からの巡回報告日報を収集し、問題や変化がないかを把握します。
  • 顧客への報告と連絡:
    • 人員配置の完了や現場での特異事項について、顧客(依頼主)に報告・連絡を行います。
  • 指導・教育:
    • 現場の警備員に対し、業務上の必要な指示や指導を行うことも重要な役割です。

3. 緊急時対応(危機管理の司令塔)

事件・事故、自然災害など、不測の事態が発生した際に、管制室が中心となって対応を指揮します。

  • 情報の収集と状況判断:
    • 警備員やシステムからの情報を基に、発生した事態の規模内容緊急度を迅速かつ正確に把握します。
  • 指示・指揮:
    • 現場の警備員に対し、初期対応避難誘導関係機関(警察、消防など)への通報を指示します。
    • 顧客への連絡や、必要に応じて応援要員の派遣を手配します。
  • 記録と報告:
    • 緊急時の対応過程を詳細に記録し、事後の報告書作成の基礎とします。緊急事態の対応は、会社の信頼に直結するため、冷静かつ的確な判断が求められます。

管制担当者に求められるスキルと資質

管制業務は、単なる事務作業ではなく、多くの人間と情報を扱うため、高度な能力が要求されます。

1. マネジメント能力・調整能力

  • リソース管理: 限られた警備員という人的資源を、多数の現場ニーズに合わせて効率的に配分する能力。
  • 優先順位付けと段取り力: 複数の現場や案件を同時に管理し、重要度や緊急度に応じて対応順序を決定する能力。

2. コミュニケーション能力

  • 社内(警備員): 警備員の個々の事情や要望を聞きつつ、指示を明確かつ円滑に伝える能力。
  • 社外(顧客・関係機関): 顧客からの急な要望変更やクレームに対し、冷静に対応し、交渉・調整を行う能力。緊急時には警察や消防など関係機関と連携する能力も必要です。

3. 危機管理能力と判断力

  • 臨機応変な対応力: 予期せぬ欠員やトラブル、緊急事態が発生した際、パニックにならず、迅速かつ最善の代替案を講じる能力。
  • 冷静な判断: 状況が混乱している時こそ、感情に流されず、事実に基づいて的確な指示を出す冷静さ。

4. 事務処理能力・ITスキル

  • 正確な処理: 勤務時間や配置場所のミスは、給与や顧客信頼に関わるため、綿密なデータ管理と正確な事務処理能力。
  • システム操作: 勤怠管理や警備配置のための専用システム(管制システム)やExcelなどを扱うITスキル。

管制業務のやりがいと大変な点

やりがい

  • 司令塔としての達成感: 多数の警備員と現場をコントロールし、大きなトラブルなく業務を終えた時の達成感は大きいでしょう。
  • 会社の中枢を担う責任: 警備業務の品質と会社の信頼を支える重要なポジションであり、その責任の重さがやりがいにつながります。
  • 問題を解決する能力: 突発的な事態を収束させ、顧客や警備員からの**「ありがとう」**の言葉に、社会貢献と役割の重要性を実感できます。

大変な点

  • プレッシャーと時間との戦い: 翌日の人員配置を確実に完了させなければならないという時間的な制約と、それに伴うプレッシャーは常にある。
  • 不規則な勤務と緊張感: 警備現場が24時間稼働している場合が多く、管制担当者も夜勤や長時間勤務になる場合があります。緊急事態はいつ発生するか分からないため、常に緊張感を保つ必要があります。
  • 人間関係の調整: 警備員のシフト調整では、個人の希望と現場の要求の板挟みになることが多く、デリケートな調整能力が求められます。

まとめ

警備会社の管制職制は、現場の警備員と顧客、そして会社を繋ぐ**「要(かなめ)」です。その業務は、人員の最適配置から緊急時の指揮まで多岐にわたり、警備業務の品質と安全性、ひいては会社の信用を直接的に左右します。高いマネジメント能力**、コミュニケーション能力、そして危機管理能力が求められる、警備会社にとって欠かせない心臓部と言えるでしょう。

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