潜水連絡員とCCUS

建設業界、特に港湾や河川などの水辺を支える技能者の皆様、そして現場の労務管理を担う経営者の皆様。

2026年4月、建設業法等の改正により、私たちの働き方は大きな転換点を迎えています。特に注目されているのが「適正な賃金(標準労務費)」の確保と、それを支える「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用です。

今回は、水中土木の世界で命を守る要となる**「潜水連絡員」と、国家資格である「潜水士」、そしてそれらがCCUS**においてどのように評価され、キャリアパスを形成していくのか。これからの「稼げる潜水工」に必要な知識を、4,000字相当の視点で徹底解説します。


1. 潜水士と潜水連絡員:似ているようで決定的に違う「資格」と「役割」

まず整理しておきたいのが、「潜水士」と「潜水連絡員」の定義の違いです。

潜水士は「国家資格」

潜水士は、労働安全衛生法に基づく国家資格です。潜水器具を用いて水中での作業に従事する者は、必ずこの免許を所持していなければなりません。いわば、水中という特殊な環境で働くための「免許証」です。

潜水連絡員は「現場の安全責任を担う役割」

一方で潜水連絡員は、高気圧業務安全衛生規則第38条によって配置が義務付けられている「役割」の名称です。潜水作業者一人につき(あるいは作業内容に応じ)、地上や船上から常に連絡を取り合い、送気圧の確認や潜水時間の管理、緊急時の対応を行う命の番人です。

法律上、連絡員そのものに潜水士免許は必須とされていませんが、「潜水作業に精通した者」である必要があるため、現場では潜水士免許を持つベテランや職長がこの任に当たることが一般的です。


2. CCUS(建設キャリアアップシステム)が変える「潜水の価値」

これまでの建設業界では、潜水作業のような特殊技能は「経験」として語られることはあっても、客観的に証明する手段が限られていました。しかし、CCUSの普及により、これが「見える化」されます。

職種分類における位置づけ

CCUSにおいて、潜水作業は主に以下の職種に含まれます。

  • とび・土工
  • 切土・法面保護工
  • 海洋土木(港湾工事)

潜水連絡員としての業務は、これらの職種における「就業履歴」として蓄積されます。特に2026年4月から導入されている**「標準労務費」**の制度下では、どのレベルの技能者が現場に何名入っているかが、会社が受け取る外注費や賃金に直結します。


3. 潜水技能者のキャリアパス:ホワイトからゴールドへ

CCUSでは、技能者のレベルが4段階のカードの色で区分されます。潜水士に関連するキャリアパスの具体例を見てみましょう。

【レベル1】ホワイト:キャリアのスタート

まだ実務経験が少ない、あるいはCCUSに登録したばかりの状態です。潜水士免許を取得していても、現場経験がなければここからのスタートとなります。

【レベル2】ブルー:一人前の技能者

  • 要件: 実務経験3年(約650日)、潜水士免許の保有。
  • 状態: 潜水作業だけでなく、潜水連絡員としての職務を遂行できる知識を有しているとみなされます。

【レベル3】シルバー:職長クラス

  • 要件: 実務経験7年(約1,500日)、職長としての経験(1〜3年)。
  • 状態: 現場の班長として、複数の潜水士と連絡員を統括し、安全な潜水計画を立てる能力が求められます。

【レベル4】ゴールド:登録基幹技能者・管理者

  • 要件: 実務経験10年(約2,100日)、登録基幹技能者講習の修了。
  • 状態: 潜水工学に基づいた高度な管理能力を持ち、大規模プロジェクトの技術責任者として活動します。

4. 2026年問題と「標準労務費」への対応

今、建設業界で最もホットな話題が、2024年改正法を経て2026年4月から本格運用されている**「標準労務費」「建設Gメン」**による監視です。

これまでは「潜水は危険だから単価が高い」という曖昧な理由で決まっていた部分もありましたが、これからは違います。

  1. CCUSレベルによる評価: 「レベル3の技能者が連絡員として配置されているから、この労務費になる」という明確なエビデンスが必要になります。
  2. 見積書の精緻化: 社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けながら、CCUSのレベル判定に基づいた適切な法定福利費や労務費を盛り込んだ見積作成が、受注側の責務となります。

特に潜水連絡員は、作業者の命を預かる重責があるため、単なる「手元作業員」としての単価ではなく、専門スキルを持った技能者としての単価を勝ち取るべきポジションです。


5. まとめ:これからの潜水工に求められること

これからの時代、水中での卓越した技術(潜水士としての腕)はもちろん大切ですが、それを**「システム上で証明する能力」**も同じくらい重要になります。

  • 潜水士免許を取得したら、即座にCCUSに登録する。
  • 現場に入場する際は、必ずカードリーダーにタッチし「就業履歴」を刻む。
  • 潜水連絡員としての経験を積み、職長教育を受けてレベル3(シルバー)を目指す。

潜水作業という、人間にしかできない高度な専門職が、そのリスクと技術に見合った正当な評価と報酬を得られる時代が来ています。

もし、「自社の潜水工のCCUS登録がうまくいかない」「レベルアップの要件が自社の業務と合致しているか不安だ」という場合は、建設業の労務管理に詳しい社会保険労務士などの専門家へ相談することをお勧めします。

安全な施工と、持続可能なキャリア形成。その両輪を回す鍵が、CCUSと潜水士・潜水連絡員の正しい理解にあるのです。


【執筆者より一言】

建設業界は今、デジタル化と法改正の荒波の中にあります。しかし、CCUSを味方につければ、それは「職人の技術を守る武器」になります。特に潜水の世界というニッチかつ重要な分野で、皆様が誇りを持って働ける環境が整うことを切に願っております。