【静岡県中小建設業社長様】静岡県の建設業再編から見える未来予想図
静岡県には現在、約1万数千社の建設業許可業者が存在しています。
しかし、私は今後10〜20年で、この数は大幅に減少していく可能性が高いと考えています。
もちろん建設業そのものがなくなるわけではありません。
むしろ社会インフラを支える重要性は今後さらに高まるでしょう。
変わるのは「会社の数」と「業界構造」です。
現在のような多数の小規模事業者が乱立する構造から、経営基盤やDX投資力を持つ中核企業を中心としたグループ構造へ再編されていく可能性があります。
もしこの流れが加速した場合、将来的に静岡県の建設業界を実質的に動かす組織は200〜300程度の企業グループへ収斂していくかもしれません。
今回は、その理由について考察してみたいと思います。
建設業界に押し寄せる3つの大きな変化
現在の建設業界は、大きく3つの変化に直面しています。
一つ目は法制度の変化です。
担い手3法の改正によって、適正な労務費の確保や価格転嫁が求められるようになりました。
これまでのような曖昧な積算や、職人の待遇を犠牲にした価格競争は通用しにくくなっています。
二つ目は建設Gメンによる監視強化です。
不適切な下請構造や法定福利費の未計上などに対する監視が強まり、透明性の高い経営が求められています。
三つ目は深刻な人手不足です。
いわゆる2045年問題とも言われる技能者不足は、今後さらに深刻化すると予測されています。
受注はあっても施工する人がいない。
そんな状況が現実になりつつあります。
この3つの変化は、企業規模の大小を問わず大きな影響を与えます。
しかし対応できる企業と対応できない企業の差は確実に広がっていくでしょう。
なぜ大規模グループへの集約が進むのか
建設業は単純に売上を増やせば良い業界ではありません。
現場数に応じた職人や現場監督、事務管理体制が必要になります。
また近年はDX投資も不可欠です。
施工管理アプリ、労務管理システム、クラウド会計、動画教育プラットフォームなど、多くの投資が求められます。
これらを個社単独で維持するには一定の売上規模が必要になります。
その結果、地域の有力企業を中心にM&Aや業務提携が進み、グループ経営が増えていく可能性があります。
例えば売上100億円規模の企業が地域の専門工事会社をグループ化し、共通のDX基盤や教育システムを提供する。
そんなモデルが今後増えていくかもしれません。
これは建設業に限らず、物流業界や介護業界などでも見られる再編の流れです。
「会社の数」は減っても「人」は残る
ここで重要なのは、会社数の減少イコール人材の消滅ではないということです。
むしろ逆です。
現在、多くの一人親方や小規模事業者が高齢化や後継者不足に悩んでいます。
単独経営を続けることが難しくなった場合、より大きな組織へ参加する選択肢が増えていくでしょう。
職人が社員として雇用されれば、
・安定した月給
・社会保険
・週休二日制
・教育制度
といった環境を得られます。
これまで会社として存在していたものが、大きな組織の一部になるだけであり、技能そのものは残り続けます。
むしろ人材不足時代においては、職人をいかに守るかが重要になります。
未来の建設業界は3つの階層に分かれる
仮に再編が進んだ場合、建設業界は大きく3つの層に整理される可能性があります。
第一層は「プラットフォーマー」です。
売上100億円以上の規模を持ち、資金力、採用力、DX投資力を備えた中核企業です。
グループ全体の労務管理や施工管理、教育システムを整備し、地域建設業のハブとして機能します。
第二層は「専門施工集団」です。
特定工種に強みを持ち、自社施工能力を武器に活躍する企業群です。
職人を直接雇用し、高い施工品質を提供します。
グループ企業でありながら独自の専門性を持つ存在になるでしょう。
第三層は「地域密着型事業者」です。
空き家修繕や小規模改修、緊急対応など、地域住民との関係性を武器に活動する企業です。
規模は小さくても地域に欠かせない存在として生き残る可能性があります。
本当に淘汰されるのは何か
私が最も注目しているのは、「小さい会社」が淘汰されるのではなく、「古い経営モデル」が淘汰されるという点です。
例えば、
職人を育てない。
DXに投資しない。
価格競争だけに頼る。
法改正を学ばない。
こうした経営スタイルは規模に関係なく厳しくなるでしょう。
一方で社員10人の会社でも、
・職人を直接雇用している
・動画教育を活用している
・施工管理をDX化している
・適正利益を確保している
のであれば十分に競争力があります。
重要なのは規模ではなく、変化への対応力です。
これから経営者が考えるべきこと
建設業界の未来を考えたとき、多くの経営者が自問すべきことがあります。
自社は地域の中核企業を目指すのか。
それとも優良企業グループの一員として成長するのか。
どちらが正解というわけではありません。
ただし、どちらを選ぶにしても共通する条件があります。
それは、
「人を育てる仕組みを持つこと」
です。
人材不足時代において最も価値のある資産は人です。
DXもM&Aも、その目的は人を活かすためにあります。
まとめ
静岡県の建設業界は今後、大きな再編局面を迎える可能性があります。
1万数千社という現在の構造がそのまま維持されるとは考えにくく、より少数の中核企業と専門施工集団を中心とした形へ変化していくかもしれません。
ただし、本当に重要なのは会社数ではありません。
変化する制度環境の中で、
「人を守れるか」
「人を育てられるか」
「技術を継承できるか」
ということです。
これからの建設業経営は、経験や勘だけではなく、デジタル活用と人材育成を両輪として進める時代になります。
再編の波は脅威ではありません。
変化を先取りした企業にとっては、大きな成長機会にもなり得るのです。

