地域の「命の道」を守る。道路舗装業が今、BCP認定を取得すべき理由と具体策
1. 道路舗装業にとってBCPとは何か?
なぜ「舗装屋」にBCPが必要なのか
BCP(Business Continuity Plan)とは、災害などの緊急事態に直面した際、損害を最小限に抑えつつ、事業を早期に復旧させるための計画です。
一般企業にとってのBCPは「自社をどう守るか」に主眼が置かれます。しかし、道路舗装業のBCPはそれだけではありません。道路という公共インフラを支える皆様にとって、BCPは**「地域社会をどう救うか」という公助の計画**でもあります。
災害時に期待される「道路啓開」の役割
大規模地震が発生した際、救急車や消防車、支援物資を運ぶトラックが通れなければ、助かる命も助かりません。がれきを退け、道路の段差を埋め、最低限の通行ルートを確保する「道路啓開(どうろけいかい)」は、重機と舗装技術を持つ皆様にしかできない任務です。
2. 国土交通省「建設会社における災害時の事業継続力認定」とは
今、多くの舗装業者が目標としているのが、国土交通省の各地方整備局(関東地方整備局、近畿地方整備局など)が実施している認定制度です。
認定制度の目的
この制度は、災害時に道路の啓開や応急復旧を実効性をもって行える建設会社を、国が公式に認定するものです。いわば**「有事の際に頼りになる会社」というお墨付き**です。
認定を受ける最大のメリット:公共工事での加点
経営上の最も大きなメリットは、公共工事の「総合評価落札方式」での加点です。
現在、多くの工事案件で「BCP認定の有無」が企業の技術力評価の項目に含まれています。0.5点、1点の差で落札が決まる厳しい入札環境において、この加点は非常に大きなアドバンテージとなります。
その他のメリット
- 資金調達の優遇: 一部の金融機関では、BCP策定企業に対して融資レートの優遇措置を設けています。
- 従業員の安心感: 「うちは有事の際もパニックにならない体制がある」という事実は、社員やその家族の安心につながります。
3. BCP認定審査でチェックされる「6つの柱」
認定を受けるためには、各地方整備局が定めるガイドラインに沿った計画書を作成し、申請する必要があります。主に以下の6項目が審査されます。
① 災害時における体制の確立
本社が被災した場合、誰が指揮を執るのか? 代行者は誰か? 現場事務所との連絡はどう確保するのか? 指揮命令系統を明確にします。
② 従業員の安否確認
現場直行・直帰が多い舗装業では、社員の安否確認が困難になりがちです。SNSや専用アプリ、あるいは緊急連絡網など、確実な確認手段を定めます。
③ 拠点の確保と備蓄
社屋の耐震対策だけでなく、停電時のための自家発電機、数日分の食料、そして何より**「緊急復旧用のアスファルト合材や常温合材」**の確保ルートが重要です。
④ 協力会社との連携
自社だけでは対応できない場合、協力会社とどう連携するか。重機リース会社やアスファルト合材工場との「災害時協力協定」の有無が問われます。
⑤ 情報共有と報告体制
発注者(国や自治体)に対し、速やかに「今、自社はこれだけの動員が可能です」と報告できる体制を整えます。
⑥ 訓練の実効性(最重要)
「計画を作って終わり」では認定されません。年に1回以上、実際に安否確認や参集訓練を行い、その結果を記録・改善していることが必須条件となります。
4. 道路舗装業特有のBCP策定ポイント
一般建築業とは異なる、舗装業ならではの注意点があります。
- アスファルト合材の調達: 災害時は合材工場自体が停電や破損で停止する恐れがあります。複数の工場とのネットワークや、長期保存可能な常温合材の備蓄計画がカギです。
- 重機の配置: 道路が寸断された場合、本社にある重機を現場へ運べません。拠点を分散させるか、現場近くの協力会社から借り受ける仕組みが必要です。
- 通信手段: 山間部やトンネル付近の工事も多いため、衛星電話や業務用無線などの検討も必要になる場合があります。
5. 認定取得へのステップ
「難しそう」と感じるかもしれませんが、ステップを踏めば必ず取得できます。
- 管轄の整備局のガイドラインを入手: まずは「関東地方整備局 BCP認定」などのキーワードで検索し、最新の評価要領を確認しましょう。
- 既存の体制を見直す: 既に緊急連絡網などがある場合は、それをBCPのフォーマットに落とし込む作業から始めます。
- 専門家の活用: 策定に時間が割けない場合は、中小企業診断士や行政書士、または損害保険会社のサポートを受けるのも有効です。
6. 結びに:BCPは「企業の未来」への投資
BCPは単なる書類作成ではありません。
それは、いざという時に大切な社員の命を守り、地域社会の期待に応え、そして自社の経営を継続するための「攻めの投資」です。
災害大国・日本において、道路を支える皆様の力は欠かせません。BCPという「武器」を手に、より強靭で信頼される企業への一歩を踏み出してみませんか?
(編集後記)
「何から手を付ければいいかわからない」という方は、まずは自社の管轄エリアの認定スケジュールを確認することから始めてみてください。
