「その時、足場と職人を守れるか?塗装工事業のための南海トラフ巨大地震BCP
1. はじめに:なぜ今、塗装業にBCPが必要なのか
数年以内の発生が危惧されている南海トラフ巨大地震。最大震度7、広範囲に及ぶ津波、そして長期化するインフラの寸断。もし今、この巨大地震が発生したら、あなたの会社の現場はどうなるでしょうか?
「うちは現場仕事だから、計画なんて立てても無駄だ」
「その時になってみないとわからない」
そう考える経営者の方も少なくありません。しかし、塗装工事業こそ、BCP(事業継続計画)の有無が「廃業」か「存続」かを分ける決定打となります。塗装業は、高い足場での作業、化学物質(塗料・溶剤)の取り扱い、そして複雑なサプライチェーンに依存しているからです。
本記事では、塗装工事業に特化した南海トラフ地震対策チェックリストと、BCP策定の具体的なステップを徹底解説します。
2. 南海トラフ巨大地震が塗装業界に与える「3つの衝撃」
南海トラフ地震が他の地震と違う点は、その「被害範囲の広さ」です。塗装業者にとっては、以下の3つのリスクが致命傷になります。
① 現場の物理的崩壊と賠償リスク
揺れが数分間続く南海トラフ地震では、施工中の足場が倒壊したり、部材が落下したりするリスクが極めて高くなります。隣接する建物や通行人に被害が出た場合、その賠償責任は計り知れません。
② 資材調達の完全停止
塗料メーカーの工場や配送拠点は、多くが太平洋沿岸部に集中しています。道路網の寸断も加わり、数週間から数ヶ月にわたって「塗料が届かない」「養生材が入らない」という事態が予想されます。
③ 深刻な人手不足と孤立
職人の多くは現場へ直行直帰します。地震発生時、各地の現場で職人が孤立し、安否確認すらままならない状況に陥ります。
3. 【実践】塗装業のためのBCP具体策チェックリスト
それでは、具体的に何を準備すべきか。4つのフェーズに分けて見ていきましょう。
フェーズ1:事前準備(今すぐできること)
「備え」はコストではなく、未来への投資です。
- 足場固定の再点検: 普段の「台風対策」以上の強度で壁当てを設置する基準を作ります。
- 在庫の分散保管: 本社倉庫だけでなく、内陸部の提携会社やコンテナなどに、最低限の塗料と養生材をストックしておきます。
- デジタルへの移行: 顧客名簿、図面、契約書はすべてクラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)にアップロードし、スマホ一つで閲覧できるようにします。
- 燃料備蓄: 災害時はガソリンスタンドが数時間待ちになります。社用車の給油ルールを「半分になったら満タンにする」と徹底します。
フェーズ2:発災直後(命を守る)
「揺れたらどう動くか」を職人と共有していますか?
- 「足場から降りる」訓練: 揺れを感じた瞬間に作業を中断し、安全に地上へ降りる手順を確認します。
- 津波避難の徹底: 沿岸部の現場では「道具を片付ける時間」を捨てて、即座に高台へ逃げる判断基準を徹底します。
- 引火物管理: 塗料の蓋を閉める、溶剤の転倒防止など、火災を防ぐための初動をマニュアル化します。
フェーズ3:初動対応(状況を把握する)
- 安否確認のルール化: 災害用伝言ダイヤル(171)やLINEワークスなど、複数の通信手段を確保します。
- 現場状況の「見える化」: 職人がスマホで現場の被害写真を撮影し、本部に即座に共有する流れを作ります。
フェーズ4:事業再開(地域を救う)
- 優先順位の「見える化」: 「崩落の恐れがある現場」→「雨漏りが発生した既存客」→「新規相談」の順で対応する優先順位をあらかじめ決めておきます。
- 代替調達先のリストアップ: 普段の取引先が被災した場合に備え、県外の卸業者とのネットワークを構築しておきます。
4. BCP策定がもたらす「経営上のメリット」
BCPは単なる防災計画ではありません。実は、策定すること自体が経営に大きなプラスをもたらします。
- 公共工事やゼネコン取引での加点: 近年、BCP策定は入札の条件や加点要素となっています。「守れる会社」としての証明が、受注獲得に直結します。
- 補助金・税制優遇の活用: 「事業継続力強化計画」として国から認定を受けると、防災設備の購入に対する税制優遇や、補助金の優先採択枠が得られます。
- 顧客からの圧倒的信頼: 「災害時でも迅速に対応してくれる塗装屋」という評判は、マンション管理組合や企業にとって最大の安心材料となります。
5. まとめ:最初の一歩は「水とトイレ」から
4,000字にわたって解説してきましたが、BCPの核心は**「社員と家族、そしてお客様を守りたいという想い」**を形にすることです。
完璧なマニュアルを作る必要はありません。まずは明日、職人さんたちにこう伝えてみてください。
「明日から、車の中に2日分の水と食料、簡易トイレを積んでおいてくれ。君たちの命が一番大事だから」
そこから、あなたの会社のBCPが始まります。
