【静岡県・中小建設業社長様】
はつり工の評価をどう変える?CCUS×24段階等級制度で「経験」と「現場力」を見える化する
建設現場には、さまざまな専門職が存在します。
その中でも「はつり工」は、建物のコンクリートを壊したり、削ったり、必要な部分を改修したりする、専門性の高い仕事です。
「はつり」と聞くと、「コンクリートを壊す仕事」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、実際の現場では、ただ力任せに壊せばよいわけではありません。
「どこを、どのくらい削るのか」「どこまで壊してよいのか」「既存の構造物を傷つけないためにはどうするのか」などを判断しながら作業を進める必要があります。
さらに、はつり工事では、粉じん、騒音、振動などが発生します。そのため、自分たちの作業だけを考えるのではなく、周囲の職人や近隣への配慮、安全対策、清掃や整理整頓まで含めて仕事をしなければなりません。
つまり、はつり工は単なる「解体作業員」ではなく、経験と技術、安全意識を組み合わせた専門職なのです。
ところが、そんな専門性の高い仕事であっても、給与や評価の仕組みが昔ながらの「親方の感覚」や「経験年数だけ」で決まっている会社もあります。
そこで活用したいのが、CCUSと24段階の等級賃金制度です。
今回は、はつり工の仕事にこの仕組みをどう組み合わせればよいのかを、できるだけ分かりやすく解説します。
はつり工の評価が難しい理由
はつり工を評価するとき、配管工などと少し違う難しさがあります。
配管工の場合は、資格や免許が昇進・昇格と結びつきやすいケースがあります。
たとえば、施工管理に関する資格や技能士資格を取得すると、「できる仕事の範囲が広がった」と会社として判断しやすくなります。
一方、はつり工の場合は、資格を一つ取得したからといって、その人の仕事の能力がすべて分かるわけではありません。
もちろん、安全に関わる資格や教育を受けていることは重要です。
しかし、実際の現場では、それ以上に「どれだけ経験があるのか」「どのような状況でも落ち着いて対応できるのか」「周囲を見ながら安全に作業できるのか」といった実践力が重要になります。
そのため、はつり工の給与を考えるときには、「資格だけ」でも「年齢や経験年数だけ」でも不十分です。
そこで、客観的なキャリア情報と、日々の現場での働き方を組み合わせることが大切になります。
CCUSがはつり工にもたらす意味
CCUS、つまり建設キャリアアップシステムは、建設技能者の資格や就業履歴などを見える形にするための仕組みです。
はつり工の場合も、これまで取得してきた資格や安全に関する教育、さらに実際に現場で働いてきた経験をキャリアとして整理していくことができます。
これまでの建設業では、
「この人は20年現場にいるからベテランだ」
「この人は昔から親方について仕事をしているから腕がいい」
というように、本人の経験が会社の中だけで判断されることもありました。
もちろん、長い経験は大きな財産です。
しかし、その経験がどのような形で積み上がってきたのかが分かりにくければ、本人にとっても会社にとっても、評価があいまいになってしまいます。
CCUSを使って資格や就業履歴などを整理すれば、「どのくらい経験を積んできた人なのか」を客観的に確認するための土台をつくることができます。
ここで重要なのは、「ただの作業員」ではなく、「経験を積んできた専門技能者」として、自分のキャリアを説明しやすくなることです。
資格手当とCCUS手当は分けて考える
はつり工の評価制度をつくるとき、非常に重要なのが「資格手当」と「CCUS手当」の役割を分けることです。
資格手当は、簡単に言えば「資格を持っていること」に対して支払う手当です。
一方、CCUS手当は「これまで積み上げてきた経験を土台として、今、現場でどのように仕事をしているか」を評価する手当です。
この2つを分けることで、評価の仕組みがかなり分かりやすくなります。
資格手当は「安全と専門性」の評価
はつり工の場合、職長・安全衛生責任者教育、コンクリート破砕器作業主任者、小型移動式クレーン、玉掛け、各種特別教育など、安全や作業に関係する資格・教育があります。
こうした資格や教育を会社として重視し、保有者に定額の手当を支給します。
つまり資格手当は、「会社にとって必要な専門知識や安全に関する能力を持っていること」に対する評価です。
一度取得した資格に対して、基本的には一定額を支給する形にすれば、社員にも分かりやすい制度になります。
CCUS手当は「現場での働き方」を評価する
これに対してCCUS手当は、CCUSレベル1〜4を土台としながら、会社独自の6段階評価を組み合わせます。
たとえば、社内評価をS、A+、A、B、C+、Cの6段階にします。
CCUSの4段階と組み合わせると、
「レベル1×S」
「レベル1×A+」
「レベル2×A」
「レベル3×B」
というように、全部で24段階の等級をつくることができます。
この制度のポイントは、経験がまだ少ない若手でも、現場での努力によって評価を上げられることです。
逆に、経験年数が長いからといって、必ず高評価になるわけではありません。
これが、はつり工の仕事と非常に相性の良い仕組みです。
はつり工では「成果・実務・安全」の3つを見る
では、社内の6段階評価では何を見るのでしょうか。
はつり工の場合、特に重要なのが「成果・実務・安全」の3つです。
① 成果・品質を見る
まずは、「決められた仕事を正確にできているか」です。
たとえば、指定された寸法どおりにコンクリートを削れているか。
必要以上に壊していないか。
既存の躯体や周囲の設備を傷つけていないか。
手戻りが少なく、丁寧な仕事ができているか。
はつり工事では、「ただ早く壊す」ことが良い仕事ではありません。
必要なところを、必要な量だけ、正確に処理することが大切です。
そのため、品質の高さは重要な評価項目になります。
② 実務・対応力を見る
次に、「現場でどれだけ自分で考えて動けるか」です。
新人のうちは、指示を受けて作業することが中心になるでしょう。
しかし経験を積むにつれて、
「次に何が必要か」
「先にどこを片付けておけば作業が進めやすいか」
「他の職種が入る前に何を終わらせるべきか」
といったことを自分で考える必要があります。
さらに、墨出しの状況や現場の進み具合を見ながら、次の作業を準備できる人は、現場全体の生産性を高めることができます。
こうした「段取り力」や「対応力」も、給与に反映させるべき能力です。
③ 安全と姿勢を見る
そして、はつり工で特に重要なのが安全です。
はつり作業では、粉じんや騒音、振動などが発生します。
だからこそ、防じんマスクや保護具を正しく使用すること、作業場所の養生を行うこと、周囲への飛散を防ぐことなどが欠かせません。
さらに重要なのが、現場全体への配慮です。
他の職種の職人が作業している場所で、周囲を確認せずに作業をしてはいけません。
近隣に住宅がある場合には、騒音や粉じんへの配慮も必要です。
元請け企業や他の職人への挨拶、現場の清掃、工具や材料の整理整頓も大切です。
つまり、「安全に作業する人」とは、単に事故を起こさない人ではありません。
周囲を見て、先回りして危険を防ぎ、現場のルールを守れる人です。
24段階制度は若手の育成に効果を発揮する
この仕組みが特に力を発揮するのが、若手の育成です。
はつり工は体力も必要で、決して楽な仕事ではありません。
そのため、「きつい仕事を何年も続けて、いつか評価される」というだけでは、若い人にとって将来のイメージが持ちにくくなります。
そこで、
「まず現場のルールを覚える」
「安全作業を身につける」
「資格や教育を受ける」
「できる作業を増やす」
「自分で段取りができるようになる」
「後輩を教えられるようになる」
という成長の道筋を見せます。
たとえば、まだCCUSレベル1の若手でも、安全ルールをしっかり守り、整理整頓を行い、挨拶や周囲への配慮を徹底していれば、社内評価でA+やSを目指せるようにします。
そうすれば、
「経験が少ないから、何をしても給料は変わらない」
という状態を避けることができます。
若手にとって、「今の努力が評価される」という実感は大きな意味を持ちます。
ベテランだから高評価、ではなくする
この制度は、若手だけのためのものではありません。
ベテランの職人にとっても、自分の経験や技術を正しく評価してもらえる仕組みになります。
ただし、ここで大切なのは、「経験が長ければ自動的に最高評価」という制度にしないことです。
たとえ長年の経験があっても、安全ルールを守らない、現場の整理整頓をしない、周囲への配慮がない、といった行動が続けば、社内評価を下げるという考え方も必要です。
これは、ベテランを低く評価するためではありません。
「経験がある人ほど、安全や周囲への配慮についても高いレベルを求める」という会社の考えを、制度として明確にするためです。
逆に、長年の経験を生かして若手を育て、事故を防ぎ、現場をスムーズに動かしているベテランは、高く評価することができます。
一律昇給から「成長に応じた賃金」へ
給与制度を考えるとき、会社側が悩みやすいのが「全員一律で昇給させてよいのか」という問題です。
たとえば、毎年全員を一律に5%昇給させれば、社員にとっては分かりやすいでしょう。
しかし、会社の利益が同じように増えていかなければ、人件費だけが膨らんでしまう可能性があります。
そこで、資格手当と24段階のCCUS手当を組み合わせます。
資格手当では、会社として必要な専門性と安全に関する資格を評価する。
そしてCCUS×6段階の評価では、現場での成果、実務能力、安全、周囲への配慮などを評価する。
この2つを分ければ、社員の成長と会社の業績をバランスよく考えた給与制度をつくりやすくなります。
「親方の感覚」から「説明できる評価」へ
昔ながらの会社では、
「あの人は長く働いているから高い」
「社長が信頼しているから高い」
といった、個人の感覚に頼った給与決定が行われることがあります。
しかし、それでは若い社員が「自分は何をすれば評価されるのか」を理解できません。
24段階の制度を導入すれば、
「この資格を取得したので資格手当が付く」
「CCUSレベルは2で、現場評価はA+だからこの等級になる」
というように、給与の理由を説明できます。
社員から「なぜ、この金額なのですか?」と聞かれたときに、社長や上司が感覚ではなく、制度を使って説明できるようになります。
これこそが、等級制度をつくる大きな意味です。
はつり工の技術を「見える価値」に変える
はつり工の仕事は、工事が終われば見えなくなることも多い仕事です。
しかし、その仕事が正確でなければ、その後の工事に大きな影響が出ることがあります。
だからこそ、はつり工は「壊す仕事」ではなく、「建物を次の工程につなぐための高度な専門仕事」と考えるべきです。
その専門性を、経験年数だけでなく、資格、就業履歴、技術、段取り、安全、周囲への配慮など、さまざまな角度から評価する。
そのための土台としてCCUSを活用し、さらに24段階の等級制度を組み合わせる。
この仕組みができれば、社員にとっては自分の成長が分かりやすくなり、会社にとっては「どんな人材を育てたいのか」を明確にできます。
まとめ
はつり工の仕事は、体力だけでは成り立ちません。
コンクリートの状態を見極め、決められた範囲を正確に処理し、周囲の安全を守りながら、他の職種と連携して現場を進める高い専門性が必要です。
だからこそ、給与制度も「経験年数だけ」「資格だけ」という単純な仕組みではなく、複数の能力を見える化する必要があります。
そこで、
資格手当=安全や専門性を評価する固定的な手当
CCUS×24段階手当=経験を土台に、現場での成果・実務・安全・姿勢を評価する手当
という切り分けが有効になります。
若手には、「経験が浅くても、努力と安全意識で評価を上げられる」という道筋を示す。
ベテランには、「長年の経験だけでなく、後輩育成や安全、現場全体への貢献まで評価する」というルールを示す。
そして会社としては、一律昇給だけに頼らず、「どんな行動や成長が会社にとって価値があるのか」を給与に反映する。
はつり工の価値は、単にコンクリートを壊すことではありません。
正確に、早く、安全に、そして周囲に配慮しながら現場を前に進めることです。
その見えにくい価値を、CCUSと24段階の等級制度によって見える形に変えていく。
それが、はつり工の技術を守り、若手を育て、社員の定着を高め、会社の利益を守るための新しい給与制度につながっていくのではないでしょうか。
