【静岡県・中小建設業社長様】事業統合後のPMIを成功させるSNS採用――「人を採る」だけではない、組織を一つにする新しい採用戦略

建設業同士の事業統合やM&Aを成功させるうえで、最も難しいのは「会社を一つにすること」ではありません。

本当に難しいのは、異なる歴史や文化を持った人たちが、「これからは同じチームだ」と思える状態をつくることです。

M&Aや対等事業統合が成立した直後、経営者は株式、組織、契約、給与制度、就業規則など、さまざまな仕組みを整えなければなりません。

しかし、制度が整ったからといって、組織が一つになるわけではありません。

現場では、

「これから会社はどうなるのだろう」

「今までのやり方は否定されるのではないか」

「新しい経営陣は自分たちをどう評価しているのか」

「結局、どちらの会社が主導権を握るのか」

といった不安が生まれます。

特に、長年その会社を支えてきたベテラン職人ほど、統合後の変化に敏感です。

だからこそ、PMI(Post Merger Integration=統合後の経営統合)では、制度だけではなく、社員の感情や組織風土を動かす仕掛けが必要になります。

そこで大きな力を発揮するのが、SNSを活用した採用活動です。

SNS採用というと、「若い人を採用するための求人活動」と考えるのが一般的です。

しかし、事業統合後の建設会社では、それだけではありません。

SNS採用は、新しい会社の文化をつくり、既存社員の誇りを高め、離職を防ぎ、若手が入ってくる未来を見せるための経営ツールにもなります。

今回は、PMIにおいてSNS採用が持つ4つの重要な役割と、統合後100日間で実践したい具体的な進め方について解説します。

1.SNS採用は「新しい会社の文化」をつくる

2社が統合すると、それぞれの会社にあった文化がぶつかります。

仕事の進め方、現場でのコミュニケーション、若手への指導方法、安全への考え方など、長年かけて形成された企業文化は簡単には変わりません。

そこで重要なのが、「どちらの文化を残すか」という発想から離れることです。

必要なのは、2社の文化を組み合わせて、新しい文化をつくることです。

SNS採用を始めると、そのための作業が自然に発生します。

「私たちの会社の魅力は何だろう?」

「どんな職人が働いているのだろう?」

「若い人に、この仕事の何を伝えたいのだろう?」

「この会社に入ったら、どんな未来があるのだろう?」

こうした問いに答えなければ、採用動画はつくれません。

つまり、動画制作そのものが、会社の魅力や価値観を整理する作業になるのです。

さらに、A社の職人とB社の職人が一緒に撮影に参加すれば、旧会社の垣根を越えてコミュニケーションが生まれます。

「この人、こんな仕事が得意だったんだ」

「実はこの職人さん、若手の育成がうまいんだ」

「この技術はぜひ動画で見せよう」

こうした発見が、組織の融合につながっていきます。

SNS採用は、外部に向けた情報発信であると同時に、社内のチームビルディングでもあるのです。

2.ベテラン職人の「誇り」を守る

PMIで特に注意したいのが、ベテラン職人の離職です。

建設会社では、ベテラン職人が単なる一人の社員ではありません。

長年の経験、技術、地域との関係、現場判断力など、会社にとって非常に大きな価値を持っています。

ところが、会社が統合すると、ベテラン職人は不安を感じることがあります。

「新しい会社では、自分たちは必要とされているのか」

「若い経営者に自分の技術が分かるのか」

「今までの経験を評価してもらえるのか」

こうした不安を放置すると、キーパーソンの離職につながる可能性があります。

そこでSNSを活用します。

たとえば、ベテラン職人の仕事を密着取材する。

長年培ってきた技術を紹介する。

難しい現場をどのように乗り越えてきたのかを聞く。

地域の仕事に対するこだわりを語ってもらう。

そして、それを採用動画として社外に発信する。

すると、職人本人にとっても、「自分の仕事が会社の価値として認められている」という実感が生まれます。

さらに、若手社員や採用候補者から、

「すごい技術ですね」

「こんな仕事ができる職人になりたい」

という反応が返ってくれば、それは職人にとって大きな励みになります。

これは単なる採用広報ではありません。

職人のプライドを守り、会社へのエンゲージメントを高める施策なのです。

3.「若手が入ってくる」という未来を見せる

統合後の現場が抱える大きな問題は、人手不足です。

ベテラン職人の仕事量が増え、若手が少ない。

一人の職人に負担が集中する。

休みを取りにくい。

教育する余裕もない。

こうした状態が続けば、社員の疲弊につながります。

だからこそ、SNS採用は「未来」を見せる必要があります。

実際に動画を発信し、若い人から問い合わせが来る。

会社見学の申し込みが入る。

面接に来る。

そして、実際に若手社員が入社する。

こうした変化を社内でも共有するのです。

すると、現場の社員からすれば、

「本当に若い人が来るんだ」

「採用活動が動いているんだ」

「これなら自分たちの負担も少しずつ減るかもしれない」

という期待が生まれます。

これは非常に重要です。

統合直後は、「会社がどうなるか分からない」という不安が組織を覆いがちです。

そこに「新しい仲間が入ってくる」という具体的な未来が加われば、空気は大きく変わります。

採用活動そのものが、社員にとって未来へのメッセージになるのです。

4.労務改善を「採用力」に変える

事業統合では、労務管理やバックオフィスの改善も重要です。

勤怠管理のクラウド化、給与計算の効率化、就業規則の整備、休日の見直し、週休2日化など、統合をきっかけに会社の働き方を改善できる機会が生まれます。

しかし、せっかく会社が良くなっても、それを外部に伝えなければ採用にはつながりません。

そこでSNSが活躍します。

たとえば、

「週休2日を目指しています」

「資格取得を会社がサポートします」

「現場の事務作業を減らしています」

「若手を育てる仕組みがあります」

「ベテランから技術を学べます」

といった情報を、動画で具体的に伝える。

求人票だけでは伝わりにくい会社の雰囲気を、映像によって見せることができます。

つまり、PMIによって整えた「働きやすい会社」を、SNSによって「選ばれる会社」へ変えていくわけです。

労務改善が土台なら、SNSはその魅力を外へ届ける増幅器です。

統合後100日間でSNS採用をどう動かすか

では、実際にPMIの中へSNS採用を組み込むには、どのように進めればいいのでしょうか。

おすすめしたいのが、最初の100日間を3段階に分けて動かす方法です。

【1〜30日】まずは「撮る」より「聴く」

最初から採用動画を量産する必要はありません。

まずやるべきことは、社員へのインタビューです。

特に、統合前から会社を支えてきたベテラン職人に、

「この仕事のどこが好きですか?」

「一番印象に残っている現場は?」

「若い人に、この仕事の何を伝えたいですか?」

「どんな後輩が入ってきてくれたら嬉しいですか?」

と聞いてみます。

これは採用取材であると同時に、社員の本音を聞くための「傾聴」の機会になります。

経営者が普段聞けていなかった話が出てくるかもしれません。

そして、A社とB社の社員を同じように取材することで、両社の共通点も見えてきます。

「実は、どちらの会社も若手を育てたいと思っていた」

「地域の仕事を大切にしている点は同じだった」

こうした共通点こそ、新しい会社の文化の土台になります。

【31〜60日】ベテランと若手をつなぐ

次の段階では、ベテラン職人と若手社員を一緒に撮影します。

たとえば、

「職人が若手に技術を教える」

「ベテランが仕事道具を紹介する」

「若手が先輩に質問する」

といった内容です。

こうした動画は採用コンテンツとしても非常に使いやすいものです。

同時に、社内では自然な師弟関係が生まれます。

ベテランにとっては「教えること」が役割になります。

若手にとっては「学ぶ相手」が明確になります。

そして会社としては、「人を育てる文化」を社内外に発信できます。

これは、採用と組織統合を同時に進める施策です。

【61日目以降】採用を「仕組み」にする

最終段階では、動画を単発の広報活動で終わらせないことが重要です。

SNS動画を見た人が、

「もっと会社を知りたい」

と思ったときに、すぐ問い合わせできる導線をつくります。

たとえば、LINE公式アカウントなどを活用し、

動画を見る

会社を知る

LINEで質問する

会社見学

面談

応募

という流れを整えます。

こうした仕組みをつくれば、採用担当者が毎回ゼロから説明する必要がなくなります。

「動画を見てもらえば会社の雰囲気が分かる」

という状態をつくることができるからです。

SNS採用で重要なのは「バズること」ではない

SNSというと、「再生回数を何万回にするか」という話になりがちです。

もちろん、多くの人に見てもらうことは重要です。

しかし、建設会社の採用において本当に重要なのは、単純な再生数ではありません。

必要なのは、

「この会社で働いてみたい」と思う人に届くことです。

たとえば、10万回再生されても応募がゼロなら、採用という目的から考えれば成功とは言えません。

逆に、地域の若者や建設業に興味を持っている人に動画が届き、数人から問い合わせがあり、その中から一人が入社する。

こちらの方が、会社にとって大きな価値があります。

だからこそ、SNSの内容も「バズ狙い」だけではなく、

職人の技術

会社の雰囲気

若手の成長

休日や働き方

資格取得

地域への貢献

など、実際に働く人が知りたい情報を中心に設計することが大切です。

PMIの「守り」とSNS採用の「攻め」

事業統合を成功させるには、守りと攻めの両方が必要です。

労務管理を整える。

就業規則を整える。

給与制度を整理する。

勤怠をクラウド化する。

これらは、会社の土台をつくる「守り」です。

一方、

採用動画を発信する。

若手に会社の魅力を伝える。

ベテランの技術を発信する。

会社の未来を見せる。

こうした活動は「攻め」です。

この二つを別々に考えてはいけません。

労務を改善したからこそ、それを採用コンテンツにできる。

ベテランの技術があるからこそ、動画で会社の魅力を伝えられる。

若手が入社するからこそ、ベテランの育成力が活きる。

つまり、PMIとSNS採用は相互に強化し合う関係なのです。

まとめ――SNS採用は「人を採る道具」から「会社を一つにする経営ツール」へ

事業統合後のPMIでSNS採用を活用する最大のメリットは、単純に応募者を増やせることではありません。

SNSを通じて、

新しい会社の文化をつくる。

ベテラン職人の誇りを守る。

若手が入ってくる未来を見せる。

改善した労務環境を採用力に変える。

この4つを同時に進められることに大きな価値があります。

特に中小建設業の統合では、「人」が経営そのものです。

どれだけ素晴らしい統合スキームをつくっても、キーパーソンが離職し、現場の士気が下がり、社員が「統合して良かった」と思えなければ、本当の意味でのPMI成功とは言えません。

だからこそ、統合後の会社は、社員に向けても積極的に発信する必要があります。

「私たちはこれから、こんな会社になります」

「あなたたちの技術を、会社はこんなに大切にしています」

「これから若い仲間を増やします」

「働き方も、もっと良くしていきます」

そのメッセージを、言葉だけではなく、実際の社員や現場の姿を通して伝えていく。

SNS動画は、そのための非常に強力な手段になります。

採用は、会社の外に向けた活動だけではありません。

社員に「この会社でこれからも働きたい」と思ってもらうことも、採用戦略の重要な一部です。

そして、PMIにおけるSNS採用の本当の価値は、ここにあります。

「人を採る」ために発信する。

その発信によって、「人が辞めない会社」をつくる。

さらに、社員が誇りを持ち、新しい仲間を迎え入れ、2つの会社が一つのチームになっていく。

「労務の適正化」という守りと、「SNS動画採用」という攻め。

この両輪を回すことができれば、事業統合は単なる会社規模の拡大ではなく、人が集まり、育ち、定着し、成長する会社へ変わる大きな転換点になります。

PMIの成功とは、契約書にサインした日ではありません。

「この会社と一緒になって良かった」と、社員が実感できる日をつくること。

そのためにSNS採用を経営戦略の中へ組み込むことは、これからの中小建設業にとって、大きな武器になっていくはずです。

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