【静岡県・中小建設業社長様】建築板金職人の努力を、きちんと評価するには?

屋根や外壁、雨どい、建物の中のダクトなどを金属板でつくり、取り付ける建築板金の仕事。建物を雨や風から守り、使いやすくするために欠かせない仕事です。

ところが、職人の技術や努力は、外から見ただけでは分かりにくいことがあります。仕上がりがきれいでも、その裏には材料の選び方や加工の工夫、正確な寸法取り、安全への気配りなど、たくさんの技術が隠れています。現場を予定どおり進める段取りや、後輩への指導も大切な力です。

こうした仕事ぶりを、会社はどのように評価すればよいのでしょうか。評価を給与にどう結びつければ、職人本人にも納得してもらえるのでしょうか。

その答えの一つが、建設キャリアアップシステム(CCUS)を土台に、会社独自の評価項目を加える「24段階式評価制度」です。そして、この制度を会社で実際に使える形に整えるためには、社会保険労務士(社労士)の専門知識も重要になります。

CCUSは職人の経験や資格を見える形にする

CCUSは、建設業で働く人の経験や資格、現場での就業実績などを登録し、本人のキャリアを記録する仕組みです。職人がどのような現場で経験を積み、どんな資格を持っているのかを、情報として確認しやすくします。

建築板金の仕事でも、能力評価の基準に沿って、経験や資格、職長としての経験などをもとにキャリアを段階的に評価します。たとえば、1級・2級建築板金技能士や施工管理技士などの資格、現場で働いた日数、仕事をまとめる立場を経験したかどうかが、評価に関わる要素になります。

CCUSでは、技能者のキャリアをレベル1からレベル4までの4段階で示します。レベル1は経験を積み始めた段階、レベル4は高い技能や知識を持つ熟練者の段階です。レベル4には、登録基幹技能者のように、現場で中心的な役割を担う人も含まれます。

これまで、職人の経験や技術は、本人や会社の中では知られていても、別の会社や現場には伝わりにくいことがありました。CCUSに情報を登録すると、キャリアを共通の基準で示しやすくなります。いわば、建設業で積み重ねてきた経験を見える形にする「全国共通の履歴書」のような役割があります。

ただし、CCUSが示すのは、技能や経験を確認するための大切な土台です。毎日の仕事ぶりや、会社の中でどう貢献しているかまで、すべて評価するものではありません。そこで、会社独自の評価を組み合わせる方法が考えられます。

4段階と6段階を組み合わせた「24段階」

「24段階式評価制度」は、CCUSの4段階に、会社独自の6段階評価を掛け合わせる考え方です。

4段階は、経験や資格などをもとにした技能者としてのキャリアです。これに対して6段階では、日々の仕事の進め方や、現場での行動を評価します。たとえば、次のような項目が考えられます。

  • 図面や寸法を確認し、正確に施工できているか
  • 作業のやり直しを減らす工夫をしているか
  • 材料や道具を準備し、仕事の順番を考えて動けるか
  • ヘルメットや安全帯などのルールを守っているか
  • 周囲と連携し、現場全体の安全に気を配っているか
  • 後輩に技術や注意点を伝え、成長を支えているか

4段階と6段階を組み合わせると、4×6で24通りの位置づけができます。たとえば、CCUSのレベルが同じ職人でも、段取りや後輩指導の力は人によって違います。その違いを評価に加えれば、資格や経験だけでは見えにくい会社への貢献も表しやすくなります。

ここで大切なのは、評価の段階を増やすこと自体ではありません。何を評価するのかをはっきりさせ、職人が次に目指す姿を理解できるようにすることです。

「正確さを高めるには、どんな作業を身につければよいのか」「次の段階に上がるには、どの資格や経験が必要なのか」「後輩を指導する役割は、どのように評価されるのか」。こうした基準が分かれば、職人は自分の現在地と次の目標を確認しやすくなります。

若手が将来を描けると、採用や定着にもつながる

若手の職人が仕事を続けるうえで、「この先、自分はどう成長できるのか」「頑張れば給与は上がるのか」が分かることは大切です。将来の道筋が見えないままだと、努力が正しく見てもらえているのか不安になることがあります。

評価制度によって、技能、資格、安全への取り組み、後輩への指導などが、どのように評価につながるのかを示せれば、若手が具体的な目標を持ちやすくなります。会社にとっても、採用の場で「入社後にどのような経験を積み、どう成長できるのか」を説明しやすくなります。

評価の基準があると、給与の決め方を説明する助けにもなります。たとえば、「この手当は何を評価して支給しているのか」「次の昇給には何が必要なのか」を具体的に話しやすくなります。

最低賃金の引き上げや、会社全体の賃金見直しを考える場面でも、給与をどのように組み立てるかは重要です。ただ「長く働いているから」「社長がそう判断したから」という説明だけでは、本人が納得できないこともあります。評価の基準が共有されていれば、給与の決定理由をより分かりやすく伝えられます。

評価表をつくるだけでは、制度は完成しない

ここで忘れてはならないのが、評価制度を会社に導入するときには、給与や働き方のルールも一緒に確認する必要があることです。

評価によって基本給や手当、昇給の仕組みを変えるなら、就業規則や賃金規程、人事評価に関する規程などの内容を見直すことがあります。評価表を作って終わりではなく、その基準が会社のルールと合っているか、実際の給与の支払い方と矛盾していないかを確認しなければなりません。

たとえば、給与を新しい基準で決めた結果、最低賃金を下回る人が出ないか。残業代の計算に使う賃金の扱いは適切か。手当の条件が、規程の説明と実際の運用で食い違っていないか。こうした点は、制度を作る段階で確かめる必要があります。

また、これまでの制度から新しい制度へ移ることで、社員の賃金が下がったり、受け取っていた手当がなくなったりする場合には、特に慎重な対応が求められます。会社が評価制度を変えるからといって、社員に不利な内容へ簡単に変更できるわけではありません。変更の必要性や内容、社員への説明などを含めて、法律上問題がないかを確認することが大切です。

社労士が関わる理由は、ルールと給与を整えるため

社会保険労務士は、労働関係の法律や社会保険、就業規則、賃金制度などを専門とする国家資格者です。会社が新しい評価制度を導入するとき、社労士は評価の仕組みが法令に合っているか、給与のルールとして無理なく運用できるかを確認します。

社労士が関わることで、評価の結果を賃金に反映するときのルールを整理しやすくなります。評価者によって判断が大きく変わらないようにすることや、社員に評価の仕組みを説明する方法を考えることも、制度を運用するうえで役立ちます。

助成金を利用できるか検討する場合にも、社労士に相談する意味があります。賃金規程の改定や人材育成、職場環境の改善に関係する助成金が利用できることもありますが、対象となる条件や申請の手続きは制度ごとに異なります。制度を導入すれば必ず助成金が受け取れるわけではないため、会社の状況と最新の要件を確認したうえで判断する必要があります。

評価制度は、社員の給与や働き方に関わる大切なルールです。導入前に法的な条件や社内規程との整合性を確認しておけば、制度への誤解や、社員とのトラブルを防ぎやすくなります。

社労士とキャリアコンサルタント、二つの視点を生かす

評価制度を職人にとって分かりやすく、会社にとって続けやすいものにするには、法律や賃金のルールだけでなく、働く人の気持ちや成長の希望にも目を向ける必要があります。

社労士は、労働・賃金のルールを整える専門家です。一方、国家資格キャリアコンサルタントは、働く人が自分の仕事や将来について考え、目標を見つけるのを支援する専門家です。

この二つの視点を取り入れることで、制度が法律に沿っているかを確かめると同時に、職人が「自分の努力を見てもらえている」「次に何を目指せばよいか分かる」と感じられる仕組みを考えやすくなります。

職人の努力が伝わる会社を目指して

建築板金の技術は、一日で身につくものではありません。経験を重ね、失敗から学び、仲間と協力し、安全に気を配りながら、少しずつ身についていきます。その成長を正しく見つけ、会社の中で評価することは、職人にとっても経営者にとっても大切です。

CCUSで経験や資格を見える形にし、会社独自の評価で日々の仕事ぶりや貢献を捉える。さらに、社労士が賃金や就業規則とのつながりを確認し、必要に応じてキャリアコンサルタントが本人の成長を支える。こうした取り組みが、職人の努力を給与や役割、次の目標につなげる助けになります。

24段階式評価制度は、表を作れば完成するものではありません。職人の意見を聞きながら、会社に合った基準をつくり、説明し、運用しながら見直していくことが大切です。努力が見える形で伝わり、安心して成長できる職場を目指すことが、採用や定着、そして会社の力を高める第一歩になります。