【静岡県中小建設業経営者様】屋根ふき職人の技術を正しく評価する「CCUS×24段階評価制度」とは?
屋根は、私たちの暮らしを雨や風から守ってくれる大切な部分です。
普段、家に住んでいるときには、屋根の上でどのような仕事が行われているのかを見る機会はほとんどありません。しかし、屋根をつくったり修理したりする「屋根ふき工」は、とても高い技術と経験が必要な仕事です。
屋根ふき工の仕事は、単に屋根材を並べて固定するだけではありません。
スレート、瓦、金属など、さまざまな材料を扱い、建物の形や屋根の傾斜に合わせて正確に施工する必要があります。特に重要なのが「雨漏りを防ぐこと」です。
屋根材だけではなく、その下にある防水シートや下地、棟やケラバなどの細かな部分まで正しく施工しなければ、雨水が建物の内部に入り込んでしまう可能性があります。
さらに、屋根の上は高所です。
職人自身が安全に作業することはもちろん、周囲の人や建物にも十分な注意を払わなければなりません。
このように、屋根ふき工は「技術」「経験」「安全管理」のすべてが求められる専門職です。
ところが、こうした職人の技術は外から見えにくいという問題があります。
「あの職人は仕事が早い」
「この人に任せれば安心だ」
という評価だけでは、その人がどのくらいの技術を持っているのかを客観的に判断することは難しいでしょう。
そこで注目されているのが、CCUS(建設キャリアアップシステム)を土台にした評価制度です。
今回は、屋根ふき工の技術を分かりやすく評価し、給与にも反映していくための「CCUS×24段階評価制度」について解説します。
1.まず知っておきたい「CCUS」とは?
CCUSとは、「建設キャリアアップシステム」のことです。
建設業で働く人の経験や資格、仕事の実績などを登録し、技能者としてのキャリアを見えるようにする仕組みです。
建設業では、同じ職人でも「どのような仕事を経験してきたのか」「どんな資格を持っているのか」「どのくらいの現場経験があるのか」が人によって大きく違います。
しかし、それまでは、その違いを全国共通の基準で分かりやすく示すことが難しい面がありました。
CCUSでは、技能者の経験や資格などをもとに、能力を4つのレベルで評価します。
一般的には、
- レベル1:建設業の仕事を始めたばかりの段階
- レベル2:一定の経験を積み、仕事を任される段階
- レベル3:より高度な技能や経験を持つ段階
- レベル4:高度な技能を持つ熟練技能者の段階
というように、キャリアを段階的に考えることができます。
屋根ふき工の場合も、実務経験だけでなく、かわらぶき技能士などの資格や職長としての経験などが、技能を評価する材料になります。
つまり、CCUSは職人にとっての「キャリアの履歴書」のような役割を果たすものだと考えると分かりやすいでしょう。
2.CCUSだけでは分からない「会社の中での実力」
では、CCUSの4段階だけで職人の給与を決めればよいのでしょうか。
実は、それだけでは十分とはいえません。
なぜなら、実際の現場では「資格や経験年数だけでは分からない能力」も重要だからです。
例えば、屋根工事では次のような能力が必要になります。
- 雨水が建物の中に入らないように施工する力
- 複雑な屋根の形に対応する力
- 現場の状況を見て作業の順番を考える力
- 他の職人と協力して仕事を進める力
- 高所作業で安全を徹底する力
- 後輩に技術を教える力
- 現場をきれいに整理整頓する力
これらは、単純に「資格を持っている」「経験年数が長い」というだけでは判断できません。
そこで考えられるのが、CCUSの4段階に会社独自の6段階評価を組み合わせる方法です。
3.「4段階×6段階=24段階評価制度」
CCUSを縦軸として4段階に分け、会社独自の評価を横軸として6段階に分けます。
すると、
4段階 × 6段階 = 24段階
という細かな評価制度をつくることができます。
この方法のポイントは、「資格や経験」と「実際の仕事ぶり」を分けて考えることです。
例えば、会社独自の6段階評価では、次のような項目を設定できます。
① 防水・納まりの精度
屋根工事で最も重要な項目の一つです。
屋根材をきれいに施工するだけでなく、防水シートや役物などを正しく施工し、雨水が入らないようにする必要があります。
見た目がきれいであることも大切ですが、それ以上に「雨漏りしない仕上がり」になっているかが重要です。
また、施工後の手直しが少ないかどうかも評価のポイントになります。
② 対応力・段取り
屋根には、単純な形だけではなく、複雑な形状のものもあります。
屋根の傾斜や建物の形によって、作業方法を変えなければならない場合もあります。
現場の状況を見て、「次に何をするべきか」を考え、効率よく仕事を進められる職人は高く評価できます。
③ 安全管理・マナー
屋根ふき工にとって、安全は非常に重要です。
高所で作業するため、安全帯やフルハーネスなどを正しく使用することはもちろん、足場や周囲の状況を確認しながら作業する必要があります。
さらに、現場周辺の住民やお客様への配慮、整理整頓、材料の管理なども重要です。
技術が高くても、安全を軽視するような働き方では会社として評価することはできません。
④ 後輩への指導力
ベテラン職人には、自分が仕事をするだけでなく、若い職人を育てる役割もあります。
「見て覚えろ」だけではなく、なぜその作業が必要なのか、どこに注意するべきなのかを分かりやすく教えることができれば、会社全体の技術力向上につながります。
また、周囲の職人と協力し、チームとして仕事を進める力も大切です。
このような項目を含めて6段階で評価すれば、単なる年功序列ではなく、実際の仕事ぶりを給与に反映しやすくなります。
4.「頑張れば給与が上がる」仕組みをつくる
評価制度をつくるだけでは意味がありません。
大切なのは、その評価を給与に結びつけることです。
例えば、24段階の等級ごとに基本給や技術手当などを設定します。
そうすると、職人から見ても、
「今、自分はどの段階なのか」
「次の段階に上がるには何が必要なのか」
「等級が上がると給与はどう変わるのか」
が分かりやすくなります。
これは若い職人にとっても大きな意味があります。
建設業では、「何年働けば一人前なのか」「どうすれば給与が上がるのか」が分かりにくいと感じる人もいるでしょう。
しかし、評価基準が明確になれば、目標を立てやすくなります。
例えば、
「まずは安全管理を徹底する」
「次に防水施工の技術を身につける」
「資格を取得する」
「後輩を指導できるようになる」
といったように、自分の成長を具体的に考えることができます。
これは、職人のやる気を高めるだけではなく、会社に長く勤めてもらうための仕組みにもつながります。
5.最低賃金対策にもつながる「給与制度の見直し」
近年、最低賃金は上昇しています。
会社としては、従業員の給与を適切に引き上げる必要があります。
しかし、単純に全社員の給与を一律で上げるだけでは、会社の人件費が大きく増えることになります。
そこで、24段階の評価制度と給与制度を連動させる方法が考えられます。
もちろん、最低賃金を下回らないことは大前提です。
そのうえで、技能や役割、責任などに応じて給与に差をつけることで、「頑張って技術を身につけた人が評価される仕組み」をつくることができます。
これは会社にとっても、職人にとっても分かりやすい制度になります。
6.評価制度をつくるなら「就業規則」も見直す
給与制度や評価制度を変更するときに忘れてはいけないのが、就業規則の見直しです。
就業規則は、会社と従業員が働くうえでの基本的なルールです。
給与の決め方や手当、評価方法などを変更するのであれば、賃金規程や人事評価に関する規程なども含めて、内容を整理する必要があります。
単純に「新しい給与表をつくりました」というだけでは、制度として十分とはいえません。
誰が、どのような基準で評価されるのか。
評価によって給与がどのように決まるのか。
昇格や昇給の条件は何なのか。
こうしたルールを明確にしておくことが重要です。
ルールがあいまいなままだと、「なぜ自分はこの評価なのか」「なぜ同じ仕事なのに給与が違うのか」といった不満につながる可能性があります。
7.そこで重要になるのが「社会保険労務士」
評価制度、給与制度、就業規則をまとめて変更する場合、会社だけで進めるのではなく、社会保険労務士などの専門家に相談することも重要です。
社会保険労務士は、労働関係の法律や社会保険など、人事・労務に関する専門家です。
例えば、最低賃金を下回っていないか、労働基準法などのルールに問題がないかを確認することができます。
また、給与制度を変更するときには、現在働いている従業員の給与が一方的に下がってしまわないよう注意が必要です。
会社にとっては制度を整理するための変更でも、従業員にとって大きな不利益になる場合には、慎重な対応が求められます。
そのため、制度を導入する前に専門家と相談し、現在の給与とのバランスや移行方法を検討することが大切です。
さらに、会社の状況によっては、利用できる助成金について相談できる場合もあります。
評価制度を導入するだけではなく、「法律」「給与」「助成金」などをまとめて考えられることが、専門家に相談するメリットです。
まとめ 屋根ふき職人の技術を「見える化」する
屋根ふき工は、建物を雨や風から守る重要な仕事です。
高所での作業には危険が伴い、さらにスレート、瓦、金属など、さまざまな材料を扱うため、高い技術と経験が必要です。
特に、屋根の下に雨水を入れないための防水や、細かな部分を正しく仕上げる「納まり」の技術は、建物の寿命にも関係する重要なポイントです。
しかし、職人の技術は外から見えにくく、「どれだけ会社に貢献しているのか」を給与に反映することは簡単ではありません。
そこで、
CCUSによる4段階のキャリア評価
×
会社独自の6段階の技能・仕事評価
を組み合わせた、
「24段階評価制度」
という考え方があります。
さらに、それを給与制度と連動させ、就業規則や賃金規程なども整備していくことで、職人が「何を頑張れば評価されるのか」を分かりやすくすることができます。
これは単なる給与計算の仕組みではありません。
若い職人が将来の目標を持ち、ベテラン職人が自分の経験や技術を次の世代へ伝えていくための仕組みにもなります。
そして会社側にとっても、職人一人ひとりの能力を把握しやすくなり、人材育成や採用、定着につなげることができます。
屋根ふき工の仕事は、完成した建物だけを見ても、その裏側にある職人の技術や経験までは分かりません。
だからこそ、「経験があるから評価する」だけではなく、「どのような技術を持ち、どのような仕事ができるのか」を見える形にすることが重要です。
職人の技術を正しく評価することは、職人を守ることでもあり、会社の未来を守ることでもあります。
CCUSを土台に、24段階の評価制度、給与制度、就業規則を整え、必要に応じて社会保険労務士などの専門家にも相談する。
こうした仕組みを少しずつ整えていくことが、屋根ふき工の技術を次の世代へつなぎ、長く安心して働ける建設会社をつくるための一つの方法になるのではないでしょうか。
