静岡県の建設業でCCUSは「登録する時代」から「経営に活かす時代」へ――採用・処遇改善・公共工事・M&Aまで変える建設キャリアアップシステムの活用法
静岡県の建設業界で、CCUS(建設キャリアアップシステム)の存在感がますます高まっています。
かつては、
「行政から言われているから登録する」
「カードを作っておけばいい」
「現場でカードをタッチするのは面倒だ」
という捉え方も少なくありませんでした。
しかし、現在のCCUSは、単なる行政手続きや現場管理のためのシステムではありません。
技能者のキャリアを「見える化」し、処遇改善、若手採用、人材育成、公共工事の受注、さらにはM&A・事業承継にまでつながる経営インフラになりつつあります。
特に静岡県では、県発注工事を中心としてCCUSの活用が進み、元請企業や主要な1次下請企業では登録・運用が高い水準に達しています。
一方で、2次・3次下請や小規模な専門工事会社、一人親方などでは、「カードは持っているけれど、現場での就業履歴が十分に蓄積されていない」という課題も残っています。
つまり、静岡県のCCUSは現在、「登録の普及」から「現場で本当に使いこなす段階」へ移行していると考えることができます。
では、これからの中小建設業はCCUSとどう向き合えばよいのでしょうか。
今回は、静岡県の建設業を取り巻くCCUSの状況を、4つの視点から考えてみます。
1.静岡県ではCCUSが「公共工事の競争力」に直結する
まず押さえておきたいのが、発注者側の動きです。
静岡県では、建設業の担い手確保や技能者の処遇改善を目的として、公共工事におけるCCUSの活用が進められています。
その代表的なものが、総合評価落札方式における評価・加点です。
公共工事では、単純に価格が安ければ受注できるわけではありません。
企業の技術力、施工能力、社会性など、さまざまな要素が評価されます。
そこにCCUSの登録・活用が関係してくることで、
「CCUSに取り組んでいる会社」
と
「CCUSへの対応が十分でない会社」
との間で、受注競争上の差が生まれる可能性があります。
さらに、経営事項審査、いわゆる「経審」においても、建設業者の社会性等に関する評価とCCUSの取り組みが関係してきます。
公共工事を主要な売上基盤としている中小建設業にとって、これは決して小さな問題ではありません。
これからは、
「CCUSをやるか、やらないか」
ではなく、
「CCUSをどこまで経営に活用できるか」
という視点が重要になっていきます。
また、静岡市や浜松市をはじめ、県内各市町でもCCUSを評価・推奨する動きが広がっています。
県の発注工事だけではなく、市町村発注の公共工事にも影響が広がれば、中小建設業にとってCCUSはますます身近な存在になります。
2.最大の課題は「カードを持つこと」ではなく「履歴を残すこと」
ここで、CCUSについて非常に重要なポイントがあります。
それは、
「登録しただけでは十分ではない」
ということです。
CCUSの本当の価値は、技能者の就業履歴が継続的に蓄積されることで生まれます。
しかし現場では、
「カードは発行した」
「登録も済ませた」
ところまでは進んでも、
「毎日きちんとカードをタッチしているか」
となると、話が変わってきます。
特に2次・3次下請、一人親方、小規模な専門工事会社では、現場ごとの運用にばらつきが出やすくなります。
例えば、
「カードを持っているけれどタッチを忘れた」
「現場に端末があることを知らなかった」
「スマートフォンでの操作方法が分からない」
「忙しくて後回しになっている」
といったことが起こります。
結果として、本来なら積み上がっていくはずの技能者のキャリアが、途中で途切れてしまいます。
これは非常にもったいないことです。
CCUSは、技能者にとっての「キャリアの通帳」のようなものだからです。
どのような現場で働いたのか。
どれだけ経験を積んだのか。
どの資格を持っているのか。
どの程度の技能を身につけたのか。
こうした情報が蓄積されることで、本人のキャリアを客観的に示しやすくなります。
したがって、中小建設業に求められるのは、
「CCUS登録率を上げる」ことから「就業履歴を確実に蓄積する」ことへのステップアップです。
3.CCUSは「職人の給料を上げる仕組み」に変わっていく
CCUSのもう一つの大きな可能性が、技能者の処遇改善です。
建設業界では長年、
「職人の技能をどう評価するのか」
という問題がありました。
一般企業であれば、勤続年数や役職、評価制度などによって給与を決める仕組みがあります。
しかし建設業では、
「何年やっているから、このくらい」
「この職人は仕事ができるから、このくらい」
という経験則に頼った評価も少なくありませんでした。
CCUSでは、技能者の経験や資格などをもとに能力を評価する仕組みが整備されています。
レベル1からレベル4まで、技能者のキャリアを段階的に評価していく考え方です。
特に、職長として現場をまとめるような技能者や、高度な技能を持つ技能者について、その能力を客観的に示せることは大きな意味があります。
これを会社の人事制度と結びつければ、
「CCUSレベルが上がる」
↓
「会社からの評価が上がる」
↓
「資格・技能に応じて手当が増える」
↓
「基本給や処遇の改善につながる」
というキャリア形成が可能になります。
もちろん、CCUSのレベルだけですべての賃金を決める必要はありません。
しかし、
「何を身につければ給与が上がるのか」
という道筋を若手に示すことは、採用・育成・定着の面で非常に重要です。
4.CCUSを「採用の武器」に変える会社が強くなる
ここからが、中小建設業にとって特に重要なポイントです。
CCUSを「行政対応」と考える会社と、「採用・育成の仕組み」と考える会社では、これから大きな差がつく可能性があります。
若い人が建設業に入るとき、不安に感じることの一つが、
「この会社で働いたら、自分はどう成長できるのか?」
ということです。
単に、
「未経験者歓迎!」
「先輩が丁寧に教えます!」
と書くだけでは、他社との差別化が難しくなっています。
そこで、
「入社後に資格を取得する」
「経験を積む」
「CCUSでキャリアを見える化する」
「技能レベルが上がる」
「それに応じて給与・手当も上がる」
というストーリーを示します。
これは若手にとって非常に分かりやすいキャリアモデルになります。
さらに、SNS動画との相性も抜群です。
例えば、
「入社3年目の職人の一日」
「資格を取ったら給与はどう変わる?」
「CCUSって何?」
「職長になるまでのキャリア」
「ベテラン職人のレベル4への道」
などを動画にする。
すると、CCUSは単なる管理システムではなく、「この会社で働くと自分はこう成長できる」という採用コンテンツになります。
5.「ベテラン職人の価値」を若手につなぐ
建設業の人手不足を考えるとき、若手採用だけに目を向けてはいけません。
もう一つ重要なのが、ベテラン職人の技能を次世代につなぐことです。
経験豊富な職人が持っている技術は、会社にとって非常に大きな資産です。
しかし、その技能が「本人の頭の中」だけに存在している状態では、本人が引退した瞬間に会社から失われてしまいます。
CCUSによるキャリアの見える化と、社内の技能伝承を組み合わせれば、
「ベテランの経験を若手の成長につなげる」
仕組みをつくることができます。
さらにSNS動画を組み合わせ、
「この道40年の職人が若手に教える」
「ベテランが新人に伝えたい3つのこと」
「この技術を身につけるまでに何年かかったのか」
といったコンテンツを発信すれば、ベテラン職人の誇りを守りながら、若手の採用にもつなげられます。
これは、以前の記事で取り上げたPMIにもつながります。
CCUS、技能伝承、SNS採用、組織統合は、実は別々の施策ではありません。
一つの経営戦略としてつなげることができます。
6.CCUSはM&A・事業承継でも「企業価値」になる
さらに、これから重要になるのがM&Aや事業承継です。
中小建設業では、後継者不足によって事業承継が大きな経営課題になっています。
会社を譲り受ける側からすれば、
「この会社にはどんな職人がいるのか」
「どの程度の技能を持っているのか」
「労務管理は適切なのか」
「公共工事への対応力はあるのか」
という情報は非常に重要です。
CCUSの登録・就業履歴が適切に管理されていれば、技能者の経験や資格などを客観的に確認しやすくなります。
これは、会社の「見えない価値」を見える化することにもつながります。
例えば、売上だけを見ると小さな会社であっても、
「地域に優秀な職長がいる」
「有資格者が複数いる」
「技能者のキャリアが適切に蓄積されている」
「若手を育成する仕組みがある」
となれば、その会社には大きな価値があります。
逆に、特定の職人の経験や人脈だけに依存し、技能や資格情報が整理されていない会社では、事業承継の際にリスクとして見られる可能性があります。
つまりCCUSは、
「今の経営を管理する仕組み」であると同時に、「将来の会社の価値を証明する仕組み」
にもなり得るのです。
7.経営労務診断とCCUSを組み合わせる
ここで、これまでの記事との重要な接点が出てきます。
それが経営労務診断・経営労務監査です。
CCUSを本当に経営に活かすのであれば、単に登録状況を確認するだけでは不十分です。
例えば、
「技能者の登録状況」
「就業履歴の蓄積状況」
「保有資格」
「賃金」
「手当」
「評価制度」
「労働時間」
「社会保険」
「就業規則」
などを一体的に確認します。
すると、
「この技能を持っている人が、会社からどのように評価されているのか」
が見えてきます。
もし、CCUSレベルが上がっているのに給与や役割に何も反映されていないのであれば、制度を見直す余地があります。
逆に、技能者の能力を正しく評価し、給与・手当・役職などに反映できれば、CCUSは会社の人事制度の強力な土台になります。
8.これからの中小建設業は「CCUSを使う会社」と「活かす会社」に分かれる
これからの建設業界では、CCUSへの対応そのものは当たり前になっていくでしょう。
問題は、その先です。
登録して終わる会社なのか。
それとも、
登録情報を採用・育成・評価・処遇・受注・事業承継にまで活用する会社なのか。
この違いが、企業競争力の差になっていく可能性があります。
特に中小建設業では、大手企業のように莫大な採用予算を使うことはできません。
だからこそ、
「自社には優秀な職人がいる」
「若手を育てている」
「技能に応じて評価する」
「働き方を改善している」
という会社の強みを、客観的な情報と動画などを組み合わせて発信する必要があります。
CCUSは、そのための「証拠」をつくる仕組みの一つになります。
まとめ――CCUSは「行政対応」から「経営戦略」へ
静岡県の建設業において、CCUSはすでに単なる新しい制度ではありません。
公共工事、経審、技能者のキャリア、処遇改善、人材育成、採用、そして事業承継。
さまざまな経営テーマとつながり始めています。
だからこそ、中小建設業の経営者には、CCUSを「面倒な事務作業」として捉えるのではなく、会社の未来をつくる経営インフラとして考えていただきたいと思います。
特に重要なのは、
① 技能者を登録する
② 現場で就業履歴を確実に蓄積する
③ レベル・資格・経験を評価する
④ 賃金・手当・役職などの処遇につなげる
⑤ SNSなどでキャリアモデルを発信する
という一連の流れです。
さらに、
経営労務診断・監査
↓
CCUSによる技能・キャリアの見える化
↓
評価・賃金制度の整備
↓
SNS採用
↓
若手育成・定着
↓
企業価値向上
という循環をつくることができれば、CCUSは単なる「カードタッチ」の仕組みから、会社を成長させる経営システムへと変わります。
そして、これから対等事業統合やM&Aを進める建設会社にとっても、CCUSの活用状況は重要な確認項目になります。
「どんな職人がいる会社なのか」
「どんな技能を持っているのか」
「その技能がどう評価されているのか」
「労務管理は適切なのか」
これらを見える化することは、会社の信用力を高めることにもつながります。
建設業の未来を考えるとき、最も大切な経営資産は「人」です。
そして、その人がどんな経験を積み、どんな技能を身につけ、どこまで成長しているのかを見える化することが、これからますます重要になります。
CCUSは、職人を管理するための仕組みではありません。
本来は、職人のキャリアと会社の価値を見える化し、技能者が誇りを持って働き続けられる建設業をつくるための仕組みです。
静岡県の中小建設業においても、これからは、
「CCUSに登録しています」
だけではなく、
「CCUSを使って、人を育て、評価し、採用し、会社の未来につなげています」
と言える企業が強くなっていくのではないでしょうか。
CCUSを「義務」から「武器」へ。
この発想の転換こそが、人手不足時代を生き抜く中小建設業の重要な経営戦略になるはずです。
「また人が辞めた…」と悩んでいる建設会社の社長様へ。
求人を出しても人が来ない。
せっかく採用しても、すぐ辞めてしまう。
現場の空気が悪く、若手が定着しない。
結局、足りないところは社長自身が現場に入って埋めている。
――そんな状態になっていませんか?
実は、人手不足の原因は「求人の出し方」だけではありません。
「給料がどう決まっているのか分からない」
「頑張っても評価されない」
「ベテランと若手の給料の差に納得できない」
こうした給与や評価の仕組みが、社員の不満や離職につながっていることがあります。
だからこそ、
「人を採る」だけではなく、「人が辞めない会社」に変えること。
これが、これからの建設会社には必要です。
まずは、自社の「給与と評価」を見直してみませんか?
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「うちの給与は、このままでいいのか?」
「若手とベテランの給料の決め方は適切か?」
「頑張っている社員を、ちゃんと評価できているか?」
そんな疑問を、一度整理してみてください。
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秘密厳守。
交通誘導警備の現場経験があり、社会保険労務士でもあるからこそ、机上の理論ではなく、「現場で本当に使える方法」を一緒に考えます。
「人が来ない」と嘆く前に、
「人が辞めない仕組み」になっているか。
まずは診断シートで、自社の現状をチェックしてみてください。
