【静岡県・中小建設業社長様】CCUSレベルを給与に連動させる――「頑張れば給料が上がる」を見える化する、これからの建設業の賃金設計

建設業界では、これまで「職人の腕」をどのように評価し、給与に反映させるのかという問題がありました。

「経験年数が長いからベテラン」

「仕事が早いから評価する」

「資格を持っているから手当を出す」

もちろん、こうした評価も大切です。

しかし、若手職人からすると、もっと知りたいことがあります。

それは、

「自分は何を頑張れば、給料が上がるのか?」

ということです。

この問いに明確に答えられる会社は、これからの人材不足時代に強くなります。

そこで注目したいのが、CCUS(建設キャリアアップシステム)の能力評価制度と、自社の給与・評価制度を連動させる仕組みです。

CCUSを単なる行政対応として終わらせるのではなく、

「技能を身につける」→「レベルが上がる」→「会社から評価される」→「給与が上がる」

というキャリアの道筋に組み込む。

これによって、職人自身が自分の成長を実感できる会社をつくることができます。

今回は、中小建設業でも導入を検討しやすい「CCUSレベル連動型賃金制度」の考え方を整理します。


1.CCUSレベルを「技能手当」に結びつける

まず分かりやすいのが、CCUSの能力評価レベルに応じて「技能手当」を設定する方法です。

例えば、一つのモデルとして次のような設計が考えられます。

CCUSレベル技能者像技能手当のモデル例
レベル1初級・見習い0円
レベル2中堅・一人前月5,000~10,000円
レベル3職長級月15,000~25,000円
レベル4高度技能者・キーマン月30,000~50,000円

これはあくまで一つの設計例です。

実際の金額は、会社の賃金水準、職種、地域、利益率、既存の資格手当や役職手当などを考慮して決定する必要があります。

重要なのは金額そのものではありません。

大切なのは、

「技能が上がれば、会社からの評価も上がる」

というルールを明確にすることです。

例えばレベル2になったら月1万円。

レベル3になったら月2万5,000円。

レベル4になったら月5万円。

こうした仕組みがあれば、若手職人にとって将来の給与をイメージしやすくなります。

「10年後にいくらもらえるか分からない会社」よりも、

「この資格を取って、この経験を積んで、レベルを上げれば、ここまで給与が上がる」

という会社のほうが、キャリアを考えやすいのです。


2.「資格手当」と「CCUS技能手当」は分けて考える

ここで注意したいのが、資格手当との関係です。

例えば、

・1級施工管理技士
・2級施工管理技士
・登録基幹技能者
・玉掛け
・小型移動式クレーン
・その他の技能講習、特別教育

などについて、すでに会社で資格手当を支給しているケースがあります。

ここにCCUS手当を単純に追加すると、制度が複雑になる可能性があります。

そこで、

資格そのものを評価する「資格手当」

と、

経験・技能・現場での能力を評価する「CCUS技能手当」

を分ける考え方が有効です。

例えば、

1級施工管理技士を取得した
→ 資格手当

CCUSレベル4の能力評価を受けた
→ CCUS技能手当

という設計です。

これなら、

「資格を取ったこと」

「現場で経験を積み、技能者として成長したこと」

の両方を評価できます。

建設業では、資格を持っているだけでは現場をまとめられないこともあります。

逆に、資格だけでは表現できない高度な技能を持った職人もいます。

だからこそ、資格と技能を別々の角度から評価することに意味があります。


3.同じCCUSレベルでも「社内評価」で差をつける

さらに一歩進めるなら、CCUSレベルだけですべての給与を決める必要はありません。

例えばレベル2の技能手当を、

月5,000円~10,000円

と幅を持たせる方法があります。

では、何によって差をつけるのでしょうか。

例えば、

・後輩を指導している
・安全意識が高い
・現場の整理整頓ができる
・顧客対応ができる
・施工写真や書類管理に協力できる
・DX化に積極的に取り組む
・会社の教育活動に協力する
・SNS動画などの採用活動にも協力する

といった項目を社内評価に組み込むことができます。

ここで重要なのは、「会社にとって望ましい行動」を給与制度と結びつけることです。

例えば、若手を育成することを会社として重要視するなら、

「後輩を育てる職長」

を評価する。

DXを進めたいなら、

「クラウドシステムやデジタル施工に積極的な職人」

を評価する。

つまり、

会社が目指す方向と、職人の評価を一致させる

わけです。

これができると、給与制度は単なる「お金を配る仕組み」ではなく、会社の経営理念を現場の行動に変える仕組みになります。


4.職人に「キャリアロードマップ」を見せる

この制度を導入するなら、ぜひ作っていただきたいものがあります。

それが、

「職人のキャリアロードマップ」

です。

例えば、

入社~3年程度

レベル1

まずは基本的な現場作業を覚える。

会社が資格取得を支援する。

3~5年程度

レベル2

一人前の技能者として現場を任される。

技能手当を支給する。

7~10年程度

レベル3

職長として現場をまとめる。

後輩の指導にも携わる。

技能手当をさらに増額する。

10年以降

レベル4

高度技能者・現場のキーマンとして活躍する。

若手育成、現場統括、幹部候補など、新たな役割を担う。

こうした道筋を入社時から見せておくのです。

若手にとって、

「この会社に入ったら、10年後にどうなるのか」

が見えることは非常に重要です。

建設業の採用では、単に「未経験歓迎」と言うだけでは足りません。

「未経験で入っても、ここまで成長できる」

という未来を見せる必要があります。


5.「技能が上がれば給与が上がる」をSNSで発信する

ここまで制度を作ったら、次にやるべきなのが情報発信です。

例えばSNSで、

「建設業って、何年働けば給料が上がるの?」

というテーマのショート動画を作ります。

そこで、

「当社ではCCUSのレベルに応じて技能手当を設定しています」

と説明する。

さらに、

「レベル1からスタート」

「資格を取得」

「現場経験を積む」

「レベル2へ」

「職長を目指す」

「レベル3へ」

というキャリアを動画で紹介します。

これは採用において非常に強いコンテンツになります。

なぜなら、若者が知りたいのは、

「この会社は何をしてくれるか」だけではなく、「この会社に入ったら自分がどうなれるか」

だからです。

「アットホームな会社です」

「先輩が丁寧に教えます」

だけでは、会社ごとの差が分かりません。

一方、

「技能を身につければ、評価され、給与が上がる」

という仕組みが明確なら、会社の魅力を具体的に伝えることができます。


6.就業規則・賃金規程にきちんと落とし込む

もちろん、制度は口約束だけではいけません。

実際に導入する場合は、就業規則や賃金規程などに支給条件を明確にしておくことが重要です。

例えば、

「建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価制度において認定されたレベルに応じ、所定の条件を満たした従業員に対してCCUS技能手当を支給する」

といった形で制度化します。

さらに、

・いつから支給するのか
・レベルが変更された場合どうするのか
・休職・休業時はどうするのか
・資格手当との重複をどうするのか
・退職時や異動時の扱いはどうするのか

なども整理しておく必要があります。

制度は「作ったこと」より、現場で誰が見ても分かることが重要です。


7.既存社員の給与を下げないことが大前提

新しい賃金制度を導入するとき、特に注意したいのが既存社員への影響です。

例えば、

「今までの職長手当を廃止して、その代わりにCCUS技能手当にする」

という変更をした結果、ある社員の給与が下がってしまった。

これは大きな問題になります。

新制度を導入する際には、

「制度をきれいにすること」よりも「従業員の既得の待遇を守りながら移行すること」

を優先する必要があります。

場合によっては、

「移行調整手当」

などの経過措置を設けることも考えられます。

特に、複数の会社が対等統合する場合には、旧会社ごとに賃金制度が違います。

A社では職長手当が3万円。

B社では職長手当が5万円。

こうした状態から統一する場合、単純に一つの制度へ当てはめると、必ず不利益を受ける人が出てきます。

だからこそ、

経営労務診断・経営労務監査で現状を把握する

賃金・手当を整理する

新しい評価制度を設計する

経過措置を設定する

段階的に統一する

という手順が重要になります。


8.会社が資格取得・レベルアップを「投資」として支援する

もう一つ重要なのが、会社側の姿勢です。

「レベルアップしなさい」

「資格を取りなさい」

と言うだけでは、職人は動きません。

会社が本気で人材育成をするのであれば、

資格取得費用を会社が負担する

講習に参加する時間を確保する

申請手続きをサポートする

など、会社側も投資する必要があります。

例えば、

「資格取得費用は会社負担」

「CCUSの能力評価申請を会社がサポート」

「合格・レベルアップ時には報奨金」

という制度にする。

すると、

会社が育てる → 職人が成長する → 会社の施工力が上がる

という好循環が生まれます。

人材不足の時代だからこそ、「人を採る会社」から「人を育てる会社」への転換が求められています。


9.CCUS賃金制度は「人材定着」の仕組みにもなる

この制度の最大のメリットは、採用だけではありません。

むしろ重要なのは、定着です。

若手職人が3年、5年、10年と働き続けるためには、

「ここにいても成長できる」

「先輩のようになれる」

「技能を身につければ給与も上がる」

という実感が必要です。

例えば、入社時にはレベル1。

数年後にレベル2になり、技能手当がつく。

さらに経験を積んで職長になり、レベル3になる。

そのときには給与も役割も上がっている。

このような「成長の階段」が見えていれば、会社に長く勤める理由になります。

これは、単純なベースアップとは違います。

「会社に在籍していること」ではなく、「会社で成長すること」に報酬をつける制度だからです。


10.CCUSを「会社の未来をつくる人事制度」にする

ここまで見てくると、CCUSは単なる技能者情報の管理システムではないことが分かります。

うまく活用すれば、

CCUS

技能の見える化

評価制度

賃金・手当

人材育成

SNS採用

定着率向上

施工力・企業価値向上

という一本の経営戦略にできます。

さらに、これを経営労務診断や労務監査と組み合わせれば、

「技能者の能力に対して適切な給与が支払われているか」

「資格や経験が評価されているか」

「労働時間や就業規則に問題がないか」

「会社の人材育成方針と賃金制度が一致しているか」

まで確認できます。

つまり、CCUSを入口として、「人を中心とした経営」に会社全体を変えていくことができるのです。


まとめ――「何を頑張れば給料が上がるのか」を明確にする

これからの建設業において、若手を採用するだけでは人手不足を解決できません。

採用した人材を育て、評価し、定着させる。

そして、その人材が次の若手を育てる。

この循環をつくらなければ、企業は持続的に成長できません。

そのための一つの強力な仕組みが、

「CCUSレベルと給与・評価制度を連動させること」

です。

もちろん、CCUSレベルだけで職人の価値をすべて決める必要はありません。

しかし、

「経験」

「資格」

「技能」

「職長としての能力」

「後輩を育てる力」

を総合的に評価し、それを給与につなげていく。

その仕組みを会社として明確にする。

これが重要です。

そして、その制度をSNSや採用ページで堂々と発信する。

「当社では、あなたが身につけた技能を正当に評価します。」

「経験を積み、CCUSレベルが上がれば、給与も上がります。」

「未経験からでも、10年後のキャリアが見える会社です。」

このメッセージを発信できる建設会社は、これからの採用市場で大きな武器を持つことになります。

CCUSを「カードタッチ」で終わらせない。

CCUSを「職人のキャリア」と「会社の賃金制度」に結びつける。

そして最終的には、

「技能が上がる会社」
「給与が上がる会社」
「誇りを持って働ける会社」
「若い人が入りたくなる会社」

へ変えていく。

これこそが、CCUSを活用したこれからの中小建設業の人材戦略ではないでしょうか。

「また人が辞めた…」と悩んでいる建設会社の社長様へ。

求人を出しても人が来ない。

せっかく採用しても、すぐ辞めてしまう。

現場の空気が悪く、若手が定着しない。

結局、足りないところは社長自身が現場に入って埋めている。

――そんな状態になっていませんか?

実は、人手不足の原因は「求人の出し方」だけではありません。

「給料がどう決まっているのか分からない」
「頑張っても評価されない」
「ベテランと若手の給料の差に納得できない」

こうした給与や評価の仕組みが、社員の不満や離職につながっていることがあります。

だからこそ、

「人を採る」だけではなく、「人が辞めない会社」に変えること。

これが、これからの建設会社には必要です。

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